ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動 - 佐々木貴之

◆観る者に大きな勇気と希望を与えてくれる(85点)

 ウガンダ北部のパトンゴ避難民キャンプで暮らす子供たちが、年に一度だけ開催される全国音楽大会に向けて練習する姿と、大会終了後までを記録したドキュメンタリー作品。

 アチョリ族が暮らすウガンダ北部。そこは、20年以上に渡って反政府武装組織LRA(神の抵抗軍)による殺戮、襲撃が住民たちを恐怖のドン底に陥れ、多くの避難民を生み出してきた。特に幼い子供たちは、LRAの連中によって拉致され、少年兵や慰安婦にさせられていた。この非人道的かつ残酷な真実をドミニク、ナンシー、ローズの三人の少年少女にスポットを当てて浮き彫りにしていく。

 本作の主役である彼らは、皆同じようにLRAによって恐怖の目に晒され、心に深すぎる傷をつけられ、人生の一部を痛めつけられた。彼らの口からは想像を絶するようなトンデモナイ残酷実体験が語られる。深刻な顔をアップで捉え、暗い曇り空で覆われた大自然を映し出したりと彼らの暗い過去を映像でもしっかりと伝えている。これらが観る者の良心を痛ませ、辛さと悲しさが心を疼かせる。

 そんな彼らも音楽とダンスに打ち込んでいるときはかつての悲惨な出来事を忘れ、笑顔でいることができる。木琴の腕前に大きな自信を持つドミニク、殺された父に歌の才能を認められたローズ、ダンスを得意とするナンシーが全国大会優勝に向けて厳しい練習に一生懸命励む。これは、身も心もボロボロになった彼らが人生の汚点を晴らすためでもある。同時に大会に出場し、練習の成果を発揮して優勝することで将来の夢を大きく切り開いていくためでもある。大会で良い結果を迎えるラストは、本当に清々しくて気持ちの良いシーンだ。彼らにとっては音楽とダンスが唯一の癒しの手段ということと、不幸すぎる出来事を経験したことを覆したいという思いがあったからこそ厳しい練習に耐えることができ、よって良い結果を勝ち取り、一つの大きな幸せを掴むことができたと考えられる。

 ちなみに、この大会で北部の最大危険地帯であるパトンゴの学校が出場したのはこれが初めてであり、記念すべき出来事であった。最後にマイナスイメージで捉えられていたパトンゴの子供たちでも、こんなに素晴らしいことができるのだと自信を持って語るシーンは、観る者に大きな勇気と希望を与えてくれる。

 とてつもなく辛い思いをしている人は、好きなことに打ち込んで素晴らしい結果を導き出し、今後の人生を大きく切り開いてみてはどうだろうか……。本作はそんなことをメッセージとして伝えているのである。

佐々木貴之

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