ウォーロード/男たちの誓い - 町田敦夫

◆ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武が夢の競演(70点)

 昨年公開された『レッドクリフ PartI』が、興収50億円を超える意外なメガヒットになったことは記憶に新しい。今年4月に封切られた後編もオープニングは好調のようだ。だが、あえて言おう。総花的な『レッドクリフ』より、主要なキャラクターを絞りこんだ『ウォーロード/男たちの誓い』の方が、実は格段に面白い。

 19世紀の中国で太平天国の乱が勃発。清朝の将軍パン(ジェット・リー)は1,600人の部下を失い、アルフ(アンディ・ラウ)とウーヤン(金城武)が仕切る盗賊団に転がりこむ。やがて3人は義兄弟の契りを結び、配下の盗賊を率いて朝廷軍に参加。しかし苦しい戦いを続けるうちに、いつしかパンとアルフの溝が深まって……。

 パンとウーヤンが初っ端に交わす切れのあるバトルでつかみはOK。その後もスピード感あふれる合戦シーンが目白押しだ。参加したエキストラは1500人以上。アクション監督のチン・シウトンは、長ったらしいカンフー勝負や、噴飯もののワイヤーアクションは排し、様々な武具を使った華麗な殺陣を組み立てた。もちろんリーは水を得た魚。要所にスローモーションを交えた映像もケレン味たっぷりで見逃せない。

 とはいえ本作の最大の見どころは3人の英傑の人物造形と、そのダイナミックな相互作用にこそある。ジェット・リーが昂然と演じたパンは、人を率いるために生まれてきたような男。職業軍人としての経験や知略、品格の高さでは盗賊たちを遥かに凌ぐが、ひと皮むけば思わぬずるさや非情さを秘めてもいる。

 盗賊あがりのアルフはパンほどの品格や英知は持たないものの、友情や信義にはとことん厚い。一本気なぶん、妻の心が自分から離れていることにも、パンに裏切られようとしていることにも気づかないKYだ。演じるアンディ・ラウは、どちらかといえばダンディな切れ者役の方が似合うタイプだが、本作ではこの山猿のような役柄に徹し、逆に俳優としての器の大きさを示した。

 パンとアルフという偉大な2つの個性の間で、いわば知と情の板挟みになるのがウーヤンだ。アルフとの固い絆を持ちながら、次第にパンの語る理想に心酔。しかしパンの二心を知ると過激な反動に打って出る。このウーヤンは物語の語り手となる重要な役どころ。演じた金城武は『レッドクリフ』でも諸葛亮孔明に扮するなど、もはや中国映画界に確かな地位を確保した。日本人としてご同慶の至りだ。

 人は皆、自分を自分たらしめるものに支配され、それがもたらす責任を背負っていかねばならぬもの。それでもパンの野心が、アルフの愚直さが、ウーヤンのナイーブさがそれぞれを破滅させていくストーリーは悲しくもほろ苦い。アルフの妻のリィエンもまた、自らの心に従ったために、その正直さの報いを受けた。本作の時代背景は人の命が今よりずっと軽かった時代だが、彼らの命のやり取りは限りなく重い。

町田敦夫

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