◆ブッ飛びまくったド派手なアクション(90点)
『ナイト・ウォッチ』(04)、『デイ・ウォッチ』(06)でお馴染みのロシア人監督ティムール・ベクマンべトフがハリウッド進出を果たした作品。原作はあの『マトリックス』シリーズの影響を受けたというマーク・ミラーと、J・G・ジョーンズによる同名の人気コミック。
仕事はうまく行かず、恋人は職場の友人に寝取られるという具合に惨めな青年ウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)。ある日、彼は謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)に出会い、これが彼の運命に多大な変化をもたらせることとなる。
本作の魅力は、何と言ってもブッ飛びまくったド派手なアクションシーンの数々であることに間違いはない。とにかくケレン味たっぷりで、視神経を刺激させまくると言っても良い程の迫力満点のアクション描写はまさに新感覚と言える。そして、インパクトが強すぎるシーンがこれでもかと言わんばかりに連打され、様々なシーンが脳裏に焼きついてしまう。特に銃弾がカーブを描いて標的に直撃するシーンは本作を語る上では絶対に外すことができないほどの名シーンであり、これは一度観たら絶対に忘れられないだろう。他にもラストのネズミ軍団が次々と爆破するシーン等の見所が満載であり、少し変わったアイデアを活かせたアクション演出は実に面白いので、そこはしっかりと評価すべきポイントである。とにかく荒唐無稽でややクレイジーな描写がアドレナリン大放出の映像に仕上がっている。
アクション以外にもウェスリーが殺し屋になるための修行を積むシーンのバイオレンスや、思わずニヤリとしてしまうようなコミカルな描写が加味されており、これによって面白さが倍増されている。エンターテイメントにとことん徹した作り方であることがわかり、この姿勢を大いに讃えたい。
キャストに関しても最高だと言える。主役であるイギリス人俳優ジェームズ・マカヴォイをはじめ、アンジェリーナ・ジョリーとモーガン・フリーマンというハリウッド最強の二大スター、さらにテレンス・スタンプ、ラッパーのコモンと芸達者がズラリと揃っており、これだけでも美味しいと思える。中でもアンジー扮するサディスティックな美女の存在がかなり大きく、作品に多大な影響を与えていることは言うまでもない。凄まじいアクションを披露している上に、タトゥーが彫り込まれた筋肉質な背中と美尻を一瞬だけ魅せつけるというちょっとしたセクシーサービスまで提供している。さらにマカヴォイ扮するウェスリーをビシビシと痛めつける。これはアンジーファンのM男たちにとっては萌えること間違いなしであり、そういった方は絶対必見だと言い切れる。それぐらいアンジーのキャラクターは凄すぎるのである。
ハリウッド製アクションに進化をもたらした一本と言っても過言ではない作品である。今後は、本作と肩を並べるような作品が続々と現れることだろう。そして、本作を超えるような作品の出現にも大きく期待したい。
(佐々木貴之)