ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢 - 福本次郎

粘土細工を1コマづつ撮影する職人的なこだわりにぬくもりを覚え、主人公の顔の残った指紋がこの作品をコンピューターではなく人間の手になるものであることを思い出させ、おそろしく時間がかかる作業であることを知らしめる。(40点)

 アニメといえばCGが全盛の時代になっても、粘土細工を1コマづつ撮影する職人的なこだわりがぬくもりを覚える。主人公の顔の残った指紋が、この作品をコンピューターではなく人間の手になるものであることを思い出させ、おそろしく時間がかかる作業であることを見る者に知らしめる。メインキャラクターの動きや表情だけでなく、周囲の小道具や背景のディテールにまで神経が行き届いた映像は、まるで人形が生きているかのような存在感が感じられる。しかしそこで繰り広げられる物語は、素材の持つソフトなタッチとは全くミスマッチの連続殺人鬼による犯罪。見た目の子供っぽさからくる期待を裏切るミステリーとスリラーを融合させるような展開は、どこか違和感を否めない。

 パン屋を始めたウォレスとグルミット。ある日、配達中にかつてのCMタレント・パイエラと知り合い、ウォレスは彼女に一目ぼれ。グルミットの制止も聞かずに彼女との交際を深める。グルミットはパン屋ばかりが犠牲になる連続殺人事件とパイエラの関係に気づき、ウォレスに忠告しようとするが聞く耳を持ってくれない。

 天才的な発明の才能を持つが日常生活では完全にグルミットに依存しているウォレス、そんなウォレスを飼い犬の立場でありながら腐れ縁の相棒のように見守るグルミット。どこか間の抜けた人間と忠実で働き者でなおかつ頭のいい犬という関係はこの作品でも健在。恋に目がくらんだウォレスの危機を冷静なグルミットが救う。映画はその過程をコミカルに描こうとするが、ネタがシリアスなだけにはじけた笑いやシニカルな教訓にまで昇華し切れておらず中途半端な印象だ。

 他にも過去にTV放映された3作品が併映されるが、デビュー作の「チーズ・ホリデー」と比べると、「ベーカリー街の悪夢」までにいかに表現技術が洗練されていったかがよくわかる。ただ、今回上映された4作品はもともとTV用に制作されたもの。わざわざ映画館に足を運ばなくてもTVで見れば十分だった。

福本次郎

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