◆ザ・ロックが宇宙人の兄妹を助ける(70点)
ミッキー・ロークが演じた『レスラー』の主人公は、とうとうリングの外に居場所を見つけることができなかったけど、プロレスラーのザ・ロックことドウェイン・ジョンソンは、着々とハリウッドで地歩を固めている様子。今作でもそれと知らずに宇宙人の兄妹を助けるタクシー運転手を演じ、十分鑑賞に堪える演技を見せている。相手役の年若い兄妹(セスとサラ)には、ともに児童文学の映画化作品に主演した経験を持つアレクサンダー・ルドウィグ(『光の六つのしるし』)と、アナソフィア・ロブ(『テラビシアにかける橋』)が扮した。
ラスベガスのタクシー運転手、ジャックはどこか様子のおかしな兄妹から荒野のまっただ中まで行くよう指示され、不審に思いながらもハイウェイに出る。やがてジャックのタクシーを、武装したSUVの集団が追走しはじめ……。
宇宙からやって来たばかりの兄妹とジャックとの出会いのシーンが抜群に面白い。ジャックのタクシーに乗りこんできたこの2人、緯度と経度で目的地を指示するかと思えば、彼のことは「ジャック・ブルーノ」とフルネームで呼び続ける。英語は一応習得していても、タクシーのドアが「ポータル」で、支払いが「通貨取り引き」になっちゃうあたりは、英文法は知ってても日常会話ができない日本人として笑っていいやら悪いやら。
本作の宣伝文句には「ロズウェル」や「エリア51」といったいかにも『Xファイル』的な言葉が並んでいるが、その手のムードを予想すると肩すかしを食う。本作で描かれるのは、いい意味でシンプルな、ハラハラドキドキのマンハント・アクションだ。宇宙人の存在を隠蔽しようとする政府機関の襲撃に始まって、悪玉宇宙人の円盤との「カー」チェイス、列車とのニアミスと、VFXてんこ盛りの派手なアクションシーンが目白押し。最後はウィッチマウンテンと呼ばれる政府の秘密基地での攻防へとなだれ込んでいく。
そうした見せ場をつなぐ脚本の緩急も上々。セスとサラがなぜ地球にやって来たのか、なぜウィッチマウンテンを目指すのかといった説明にもよどみがない。ジャックらに味方する女性科学者(カーラ・グギーノ)も、いいコメディリリーフになっている。ところどころに過去の傑作SFをパクったようなシーンが見られるのは難点だが、物語の基本がしっかり組み立てられているからさほど気になることもないだろう。夏休みを控えたこの時期、ディズニー配給の映画らしく、大人も子供も理屈抜きに楽しめる作品だ。
(町田敦夫)