◆ハイテクの脅威を描くジェットコースター・アクション(70点)
スティーブン・スピルバーグの構想を元に作られたノンストップ・スペクタクル。コピーショップの店員ジェリー(シャイア・ラブーフ)と、子どもを人質に取られたレイチェル(ミシェル・モナハン)が、謎の女性“アリア”に電話で命じられるまま、否応なしに犯罪行為を強いられて……。
アリアが街中のサインボードや交通信号、個人の携帯電話や私企業の機械システムまで意のままに動かすのがいかにも不気味。ハイテク機器による監視の恐ろしさを描いた映画は90年代からいくつも作られてきたが、あらゆるシステムがオンラインでつながった21世紀には、それらが誰に操られるかわからないという新種の危険が芽生えているのだ。便利さと引き替えに、私たちはいったい何を手放したのだろう。
「アリアの正体は何者なのか」と、「なぜジェリーとレイチェルが選ばれたのか」は、ストーリーを引っぱる2つの謎だ。主役2人を空軍、国防省、FBIなどが追い回し、中盤まではアリアが善玉なのか悪玉なのかも判然としない。アリアの企ての背景にはアメリカ軍が世界各地でやらかしている誤爆があるのだが、そこに映画人の清廉な批判精神を見るべきか、目ざとい商人魂をみるべきかはかなりビミョー。
監督はD・J・カルーソに任せ、スピルバーグ自身は製作総指揮に回っているが、たとえばロザリオ・ドーソン扮する捜査官が、めちゃくちゃハイテクな敵を、めちゃくちゃアナログな方法で倒すシーンなどに、“アナログ派”スピルバーグの影響力が見てとれる。ストーリー展開もスピルバーグお得意のジェットコースター感覚だ。銃撃、脱獄、カーチェイス、空港での追いかけっこに、トンネル内での大爆破。緩急の「急」だけを並べたような作りだけに、ゆめゆめ気を抜くことなかれ。モタモタしてると置いてかれるぞ!
(町田敦夫)