インフォーマント! - 福本次郎

◆内部告発しようとする主人公の正義感が非常に安っぽいのに、それを見抜けない会社。さらにFBIが彼に振り回されるという構図が、コミカルな音楽に彩られる。しかし、人間の愚かさを突き詰めたおかしさまでにはに詰められいない。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 米国人の主食だけでなく多くの食品の添加物となり、エネルギーにも変換できるコーンを牛耳るものが経済を左右する。そんな世の中の歪みを知りながらも、なんとか折り合いを付けている男は、虚構で固めた自分の人生こそがまともであると信じている。国際的な組織犯罪に手を染める大企業を内部告発しようとする主人公の正義感が非常に安っぽいのに、それを見抜けない会社。さらにFBIが彼に振り回されるという構図が、コミカルな音楽に彩られる。しかし、彼らの愚かさを突き詰めたおかしさまでにはに詰められておらず、斜に構えた中途半端で笑えないコメディになっている。この中途半端さこそが人間の真実と言いたいのだろうが・・・。

 業績が上がらないのはスパイがいるせいだと上司に報告したマークは、国外の大企業同士で価格カルテルが結ばれることを知り、FBIに通報する。証拠集めのために会合場所にカメラを設置し会話をテープで隠し撮り、ついに会社に強制捜査が入る。

 なぜかドイツかぶれだったり、養子だったと経歴を詐称したり、マークは小さな嘘をばれないように嘘の上塗りをするタイプ。その一方でスパイ気取りで情報を収集し、FBIを手玉に取るほど頭の回転も速い。その上告発したことで会社での地位が上がると思っているなど、頭の中で描いた空想をどんどん膨らませ、実現すると根拠もなく信じている。だが、彼の支離滅裂な妄想には、FBI捜査官だけでなく見ている方も付いていけなくなる。

 強制捜査の結果、今度はマーク自身に横領が発覚、内部告発するための必要経費といった言い訳で逃れようとする。大胆なのか小心なのか、ずる賢いのかバカなのか、最後までつかみどころのないマーク。マークの視線で見れば彼を取り巻く世界の方が間違っているのに、少し距離を取るとやっぱりマークの精神が澱んでいる。しかもマークが仕掛ける行為がディテールに乏しいために彼の心理的緊張感を共有できず、結局共感するには程遠く、いつまでたっても物語は空疎なまま。過去の洗練されたS・ソダーバーグと比べて、脚本にも演出にもまったく切れ味を欠いていた。

福本次郎

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