◆一歩間違えば甘ったれた青年のドジな物語(75点)
若者が欲するピュアな孤独を描いた秀作。大学卒業と同時に家族や金銭、車を捨てて、真の自由を求めてアラスカの荒野を目指す青年クリスが、彷徨の果てに悲劇的な最期を迎えるまでを静かにつづる。一歩間違えば甘ったれた青年のドジな物語なのだが、若さとはいつも必要以上に純粋なもの。主人公は自然そのものに精神の自由を見た。ただ、文明を否定する彼が、日記や写真という記録を残す行為で文明化されたのは皮肉に思える。ストイックな視点と苦味が強く超低温な演出が監督ショーン・ペンの持ち味だ。これは彼の理想で、今も追い求めているスピリッツなのだろう。
(渡まち子)