これぞ冒険活劇ムービー。19年ぶりの最新作には懐かしい顔と新しい顔が見えて、サービス満点だ。(65点)
冷戦時代の1957年、考古学者にして冒険家のインディアナ・ジョーンズ博士は、生意気な若者マットと共に、伝説の古代秘宝“クリスタル・スカル”を求めて南米に旅立つ。だが、ソ連の非情な工作員もその宝を狙っていて…。
有名なテーマソングを聞くだけで胸が躍るというファンは多いはず。もちろん私も劇中に“インディは蛇が大の苦手” のような旧作のお約束を発見しては、懐かしいなぁとノスタルジーに浸っていた。だが、某サイトで「インディ・ジョーンズってディズニー・ランドのアトラクションだと思ってました。映画だったんですね」(中学生女子)との書き込みを見てしまい、激しくショックを受けている。年をとるってこういうことなのか。なんだか寂しい気がしてきた。
気を取り直して、映画の話を。50年代は米ソ対立の真っ只中で、とりわけ科学技術や宇宙開発の分野での競争は熾烈だ。物語は、宇宙人の遺物を回収したという1947年のロズウェルUFO事件を思わせる出来事を発端に展開し、核実験やマッカーシズムなどの設定が妙に生々しい。不穏な政治の臭いがするアメリカを離れたインディの冒険の舞台は、伝説の古代文明が眠る南米だ。
ちなみにクリスタル・スカルとは水晶の髑髏(どくろ)。とてつもない力を秘める実在の宝物である。物語では、超常現象をあっさり信じるあたりがロマンチックでいかにも50年代だが、強大なパワーを巡って米ソがしのぎを削るというプロットは説得力がある。実際この時代には、宇宙や超能力に関するワケのわからぬ噂が飛びかい、玉石混合のSF映画が山ほど作られた。
正体が分からない宝と共産主義という分かりやすい敵。妙なバランスで進むド派手な冒険の道連れには、新旧の顔が入り混じる。懐かしさと新鮮さの二つがシリーズものの大原則だ。かつての恋人マリオンと再会し驚きの事実を知るが、動揺などするヒマはない。水陸共用の軍用車での激しいカーチェイス、殺人アリとの死闘、滝を3度も転落、と大忙しだ。と言っても、かすり傷一つ負わないインディ御大である。悪役のケイト・ブランシェットが、几帳面で冷徹なソ連の軍人イリーナを怪演するのに対し、時には法や倫理も無視して突っ走るインディのやんちゃな姿が痛快だ。少し老いたとはいえ、ハリソン・フォードの動きには覇気がある。やっぱりこのシリーズの唯一無二の主役はこの人だ。
インディは武道の達人でもなければ、特別な秘密兵器もない異色のヒーロー。武器は豊富な知識と出たとこ勝負の冒険心だけだ。その意味で、今回の宝探しのクライマックスは実に彼らしい。しかもスピルバーグ的だ。勢いが全てのジェットコースター・ムービーに、いちいちツッコミは入れたくないが、どうしてもひとつだけ。核爆発を避けるには、まずは冷蔵庫に入って放射能をやりすごし、その後は身体を石鹸でゴシゴシ洗って、ハイ、おしまい!だ。う?む、この脳天気。さすがはテーマパークのアトラクションになるだけはある。
(渡まち子)