イングロリアス・バスターズ - 佐々木貴之

◆タランティーノ節が全開(85点)

 クエンティン・タランティーノ監督が、『キル・ビル』製作の頃から構想を描いていた異色の戦争アクション。

 1941年。ナチス占領下のフランス田舎町。家族を“ユダヤ・ハンター”と呼ばれる冷血漢のランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)に虐殺されたユダヤ人女性のショシャナ(メラニー・ロラン)。彼女は、三年後に劇場支配人をやりながらもナチス一掃という復讐計画を進めていた。同じ頃、アルド中尉(ブラッド・ピット)率いるユダヤ系アメリカ人中心の連合軍特殊部隊“イングロリアス・バスターズ”がナチス兵を次々と虐殺しては血祭りに上げていた。そんな中、彼らはショシャナの劇場でナチスの国策映画「国民の誇り」プレミアム上映会である作戦を実行するべく動き出す。

 『地獄のバスターズ』(76、日本未公開)等の戦争映画に影響を受けたタランティーノ監督は、兵士が戦場で撃ちまくり、戦闘機が飛び回り、戦車が大砲をブッ放すというありきたりで単純な戦争モノとして仕上げなかった。

 冒頭で観られる、洗濯物として干されている白いシーツの向こう側からナチス兵の軍用車が近づいてくるシーンは、タランティーノ監督お気に入りのマカロニウエスタンの雰囲気が味わえる。その後はショシャナの復讐劇がストーリーの主軸になるが、これまたタランティーノ監督らしい持ち味であることがわかる。中盤あたりからはスパイ映画の要素も取り入れてしまい、最後には大掛かりなアクションを魅せつけてくれる。他にもコメディー要素や過激なバイオレンス描写を取り入れて面白い作風に仕上げている。

 ナチス兵の頭皮をナイフで剥ぎ取るという酷な残虐さを魅せつけたり、バットで頭を殴り回したりという具合にバイオレンス度は、かつてのタランティーノ作品と比較するとかなりパワーアップしている。また、アクションに関してもマシンガンをガンガンブッ放して見応え抜群の壮絶なシーンに仕上げ、ラストでは大爆破シーンも用意されている。タランティーノ監督の腕前が更にアップしていることがわかる一方で、大掛かりな見せ場を魅せつけることに成功したのである。

 他にもいつも通りの過去の作品へのオマージュや既存の楽曲を巧妙に使用したり、独特の会話劇を魅せつけたりとタランティーノ節が全開だ。

佐々木貴之

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