◆アクション描写がセールスポイント(85点)
マーベル・コミックの人気キャラクター「ハルク」を実写化した作品。「ハルク」は2003年に初めて実写映画化され、今回が二度目となる。だが本作は2003年版の続編ではなく、キャスト、ストーリー、作風等を一新したまったくの別物である。
科学者ブルース・バナー(エドワード・ノートン)は、元カノのベティ(リブ・タイラー)の父親であるロス将軍(ウィリアム・ハート)のもとで化学実験に取り組んでいたが、研究中の事故によってガンマ線を全身に浴びてしまう。これが原因で、ブルースは怒りや恐怖を感じて心拍数が200を超えると緑色の巨大モンスター“ハルク”に変貌する身となる。そんなハルクのパワーを利用しようと企む軍と戦うべく、ブルースは敢えてハルクに変身して激闘を繰り広げる。
監督はアクションを得意とするルイ・レテリエ。彼ならではのアクション描写がセールスポイントとなっており、三つの見せ場が用意されている。まずは、前半のブラジルの工場内でのバトル、次に中盤のヴァージニア大学校内での軍との壮絶なバトル、そしてクライマックスのニューヨーク市街で巨大モンスター化したエミル・ブロンスキー(ティム・ロス)とのモンスターバトルというメニューだ。これらのシーンは、とにかく満点の迫力をしっかりと醸し出しており、パワフルかつダイナミックに描かれている。手に汗を握るほどの興奮と刺激を存分に味わうことができ、とてつもないパワーを感じさせてくれる映像が観る者を圧倒させる。特にクライマックスは特撮怪獣映画で描かれるような怪獣同士の対決とほぼ似通っているため、特撮ファンにとっては嬉しく思えること間違いなしだ。とにかく三つの見せ場は最も注目すべきポイントであり、面白さが最大限に発揮されているため目を凝らして観て頂きたい。
アクション以外の面白いポイントと言えば、意外だと思える二人のカメオ出演者である。まずは、ブルースが逃亡先のブラジルで、心拍数を上げないための呼吸法を武術家のもとで訓練するシーンがある。この武術家を演じているのは、あの有名な400戦無敗を誇る最強格闘家ヒクソン・グレイシーだ。このキャラクターの描き方は、ヒクソンをそのまま利用したような感じであるため、格闘技ファンにとっては必見だと言える。そして、ラストシーンに登場する人物にはかなり驚愕させられる。その人物は、本作と同じくマーベル・コミックが原作の映画『アイアンマン』(08)の主役ロバート・ダウニー・JR.であり、アイアンマンことトニー・スタークそのまんまのキャラクターで登場してロス将軍と絡む。最後の最後にサプライズなプレゼントとしてアイアンマンが用意されたのだから、本作を観たのであれば『アイアンマン』も絶対に観なければいけないと自然にもそう思えてしまう。これに関しては、会社側の戦略の一つとも予想できる。
本作は、最初から最後の最後まで面白さをぎっしりと詰め込んだ超大作娯楽作品だと言いたい。そして、2003年版を観ていない方は、本作を楽しむために無理をしてでも2003年版を見る必要はないということも言いたい。まったく別物の作品だからストレートに本作から観ても全然ありだと断言したい。
(佐々木貴之)