決断を迫られたときは必ず “yes” と言ってみる。するとそれまでの人生が嘘だったかのように積極的になり、縁がないものとあきらめていた幸運が舞い込んでくる。自分を肯定する魔法のことばで劇的に変化する過程が楽しい。(40点)

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決断を迫られたときは必ず "yes" と言ってみる。するとそれまでの人生が嘘だったかのように物事に対して積極的になり、縁がないものとあきらめていた幸運が舞い込んでくる。離婚をきっかけに人間嫌いになり、友人や隣人の誘いを断り続け、オフィスでも最低限のことしかこなさなかった男が "yes" のひと言で生まれ変わる。自分を肯定する魔法のことばは他人の心にも伝染し周囲までハッピーにする、主人公が劇的に変化する過程がコミカルで楽しい。
仕事はやる気がなく家でDVDを見るだけの日々を送っていたカールは、気まぐれに参加したセミナーで「何事にも "yes" と答える」と約束させられ、早速ホームレスの頼みを聞いてやると不思議な魅力を持ったバイクの女と出会う。その後会社でも友人との交流でも "yes" を連発していると運勢が好転していく。
バイクの女・アリソンと再会したカールは急速に接近、会社でも昇進が待っている。だが "yes" 効果を実感するカールの表情はどこか曇っている。それは心から "yes" と言っていないから。本心に嘘をついても、自分だけでなく自分を信頼している人まで傷つけるだけということに気付いたのだ。やがて "no" と口にすれば災厄が降りかかると信じて何も考えていなかったツケが回ってくる。
ただ、カールが引きこもりになった理由が離婚だけで細かいことは省略され、"yes" マンになったのちも余りにもノー天気。どれだけ悲劇的なことが起きたのか、また "yes" の連発で経済的肉体的に相当な負担があったはずなのに、そのあたりの苦悩や困惑が描かれていないため、イマイチカールに共感できない。しかも、結局 "yes" ではなく "maybe" でアリソンと仲直りする始末。 "no" を "yes" と答えるのは言語道断だが、 "maybe" を "yes" と言い切ってこそ充実した人生が待っているのではないだろうか。
(福本次郎)