◆アーノルドの本音発言は爆笑必至(85点)
アメリカで70年代から80年代にかけてテレビ放映された伝説的な30分ホーム・コメディが、満を持して初のDVD化。日本でも「冗談は顔だけにしろよ?」の名セリフで一世を風靡。アラフォー世代以上であれば懐かしく思い出される人もいるだろう。
8歳のアーノルド(ゲーリー・コールマン)と13歳のウィリス(トッド・ブリッジス)は、ハーレム育ちの仲良し兄弟。ふたりはある日、白人でニューヨーク随一の大富豪ドラモンド(コンラッド・ベイン)の家にもらわれることになった……。
大人顔負けの話術をもつ素直でわんぱくなアーノルドと、養父ドラモンドに反抗的な態度ばかりとるウィリス。ドラマは、スラム育ちの黒人兄弟が、生活環境や貧富・人種・世代の差を乗り越えて、養父であるドラモンドに少しずつ心を許していき、家族の絆を深めていく過程を描く。笑って、笑って、大笑いして、最後にホロリとさせられるハートフル・コメディの秀作だ。
見どころは、ブラックユーモアを満載した超赤裸々な会話劇(舌戦?)だ。なかでも"御意見無用"とばかりにくり出されるアーノルドの本音発言は爆笑必至。鋭く容赦のない毒舌トークと、それにたじろぐドラモンドのリアクションが、最大の見どころ&笑いどころだ。毎回、さまざまな事件やトラブルが起きて、この急造の養子縁組家族に危機が訪れるが、最後には誤解が解消されて、家族の絆がより一層強くなる――という基本パターン。長寿番組になり得たのは、視聴者がこうしたお約束の展開をこよなく愛していたからだろう。
このドラマの根っこを支えているのは、養父ドラモンドが兄弟に注ぐ深い愛情だ。大富豪のプライドや見栄などではなく、ふたりを愛するがゆえに、いつでも真正面から彼らと向き合う。感情的になることなく、兄弟の話や言い分によく耳を傾け、叱るときは本気で叱り、自分に非があるときは、素直に謝罪の言葉を口にする。ドラモンドと兄弟の関係は常に対等だ。とりわけ反抗心むき出しだった兄のウィリスが少しずつ素直さを取り戻していく姿に、ドラモンドの「生きた教育」の真価をうかがい知ることができる。
ほのぼのしたホーム・コメディであると同時に、「貧富の差」「人種差別」「教育」などの社会問題に対する風刺描写でも視聴者をニヤリとさせる。放映開始から30年以上がすぎた現代でも(文化の異なる日本でも)十分に楽しめるのは、この作品が"喜怒哀楽"という人間の普遍的な感情と、今もなお解消されていない根深い社会問題に切れ込んでいるからにほかならず、そこに「アーノルド坊やは人気者」を名作たらしめている理由がある。懐かしのホーム・コメディを肴に、お茶の間で家族団らんというのも、たまにはいいかも!?
(山口拓朗)