アーティスト - 樺沢 紫苑

この映画を見ると「言葉がなくても、こんなに気持ちは伝わるんだ」ということを、再確認できます。(点数 80点)


(C)La Petite Reine – Studio 37 – La Classe Américaine – JD Prod – France 3 Cinéma – Jouror Productions – uFilm

 アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞ほか5部門を受賞した
話題作『アーティスト』。
 公開直後に、見てきました!

 もっとエンタメ色の強い映画かと思いましたが、
実験映画とエンタメのギリギリのライン。
 よくこの作品がアカデミー作品賞を受賞したな、と驚きます。

 サイレントからトーキーへと移り変わる時代。
 そこから消え去る人気男優ジョージと、
新たなヒロインとして急成長していくペピー。
 
 二人の明と暗が、そのまま「サイレント」と「トーキー」という
時代をうつします。

 サイレント作品へのオマージュが随所に盛り込まれているので、
サイレント映画をよく知っているほど楽しめます。

 一方で、チャップリンの映画すら見たことのない若い人たちには、
おもしろいのかどうかはわかりません。

 この映画自体が、ほぼサイレント(セリフなしの音楽のみ)で
作られているのが実験映画的なのですが、
それは私たちのイマジネーションを猛烈に刺激します。

 時々重要なセリフは、サイレント映画的に字幕は出ますが、
大部分のシーンで、セリフは観客の「想像力」に委ねられます。

 このシーンでは、こんなセリフを言っているんじゃないかと。
 でもそれが、非常に伝わるんです。

 映画というのは、昔はただ受け取るだけではなく、
製作者と観客との共同作業で創り上げていくものだったんだ・・・と。

 言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション。
 非言語的コミュニケーションが非常に大きな割合を占めている
という心理実験もありますが、
この映画を見ると「言葉がなくても、こんなに気持ちは伝わるんだ」
ということを、再確認できます。

 最近の日本では、普通のバラエティ番組にすら字幕がついているほど。
 非言語的な感情を読み取る能力は、著しく落ちているはず。

 この映画を見て、主人公たちの気持ちが手に取るようにわかるのかどうかは、
個人差があるかもしれません。

 万人受けする映画ではないでしょうが、映画ファンであれば、
この作品が持つ映画への愛情に強く共感するはずです。

樺沢 紫苑

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