◆リュック・ベッソンによる「アーサー」三部作の第2部。「アーサーとミニモイの不思議な国」(2006)に続き、実写と3DCGアニメを見事に合成し、フランスらしいユーモラスでお洒落な「地下王国」の世界を見せてくれる(68点)
ミクロな地下世界を描きながら、「アバター」のようにエコロジーや自然回帰、反文明主義的な薄っぺらさに支配されていないのがいい。まるで無国籍都市・新宿のような、ピカピカ光る繁華街なのだ。
前作で身長2ミリの民族「ミニモイ」の国を危機から救った少年アーサー(フレディ・ハイモア)が、再びミニモイの国を訪れるストーリー。冒頭、ミニモイたちがアーサーを迎える「満月の宴」を用意する場面が素晴らしい。森の中、虫たちを重機のように使いながら、小人たちが果実を収穫していく。現実の果物や虫の質感を3DCGでリアルに描きつつ、架空の世界を表現する。その完成度はかなりのものだ。そこから実写への移行にも、全く違和感がない。
アーサーの祖母役はミア・ファロー。我々の年代には「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)の若妻や、ウディ・アレン映画のヒロインというイメージが強い。ああもうおばあちゃんの役なのか、と自分が年をとったことを思い知らされてしまった。
自然との一体化を修行するアーサーは、思想的にはエコロジーやアニミズムなのだが、表現される地下世界「パラダイス通り」は大都会のように賑やかで楽しい。ちょっとした溝がまるでビルのようにそびえ立ち、音楽が鳴り響き、ネオンの光でギラギラと輝いている。昆虫たちはここでは乗り物代わりに地を走り、空を飛ぶ。小さな住民たちはカラフルで派手な衣装に身を包み、結構お洒落だ。テントウムシの飛行機を運転するアーサーたちと、カエルやネズミとのチェイスはスピード感があって迫力たっぷり。ユーモラスかつハラハラさせてくれる。本作の最大の見所だろう。
現実にもミクロの世界では、様々な営為が行われているわけだが、床下にこんな世界があると想像すると、とても楽しくなる。映画は魔王マルタザールが現実世界に現れるところで終わる。3部作の第2部なので、途中で終わってしまうのは仕方ない。だが、最終章も見てみたいと十分に思わせる出来だった。
(小梶勝男)