アルビン/歌うシマリス3兄弟 - 福本次郎

実写の中でCGで細密に作りこまれたキャラクターが活躍する様子は、実際の動物や人間が演じる必要がない時代を予言しているのか。この作品のシマリスたちは違和感なく背景に溶け込み、俳優たちと演技を楽しんでいるかのようだ。(40点)

 実写の中で、CGで細密に作りこまれたキャラクターが活躍する様子は、もはや実際の動物や人間が演じる必要がない時代が遠からず来ることを予言しているのだろうか。この作品のシマリスたちはまったく違和感なく背景に溶け込み、俳優たちと演技を楽しんでいるかのよう。あらゆる動きや表情が映画的で分りやすく、シマリスが人間の言葉をしゃべったり歌ったり踊ったりすることに、いつの間にか違和感を覚えなくなってしまう。しかし、対象はあくまで子供なのだろう、彼らの大げさな感情表現には戸惑いを感じる。

 間違って都会に連れてこられたシマリス3兄弟、アルビン、サイモン、セオドアは、売れない作曲家・デイブの家に転がり込む。3兄弟のエンタテイナー的才能を知ったデイブはレコード会社からデビューさせ、彼らはまたたく間にスターになっていく。

 失恋の痛手からファミリーという言葉に敏感になっているデイブと、まだまだ親のぬくもりが恋しい3兄弟。デイブは彼らを厳しくしつけると同時に、愛し愛されることの大切さも教えようとする。散らかし放題の部屋を掃除させる一方、夜はベッドに入れてやる。デイブにとってもシマリスたちはなくてはならない存在になっていく過程がほほえましい。ただ、そこに至るまでにディナーや仕事の邪魔をするあたりが余りにも取ってつけたようで、大人の鑑賞には向かない。

 やがて3兄弟はリッチな生活を手に入れた代償に強欲なマネージャーによって酷使され、デイブが恋しくなる。そんな実情を知ったデイブは彼らを助けに行く。ここで、普通なら3兄弟を巡ってデイブとマネージャーとの間に手に汗握るような追いかけっこやドタバタが展開するのだが、デイブは拍子抜けするほどあっさりとシマリスたちを取り戻す。そしてデイブは、彼の本心を知った元カノともヨリを戻し、3匹もデイブの元で仲良く暮らしながら歌を続けるという予定調和的なハッピーエンド。日本ならば「アンパンマン」を見て喜ぶ年齢層に向けて作られたのは間違いない。

福本次郎

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