フランスらしさを感じるが、もう少し大盛で食べたい(55点)
このシリーズは、実際に動ける2人の男を主演に、そのリアルアクションを楽しもうという明快なコンセプトで作られている。核となるのはスパルタンな雰囲気のカンフーと、ハイレベルなパルクール。肉体ひとつで敵と戦い、障害物を乗り越える。彼らの非常識な身体能力に驚愕する娯楽ムービーだ。
2013年、パリ。前作で主人公らが交わした約束と違い、バンリュー13地区はいまだ無法地帯として塀で囲まれている。そんな中、内部で警官射殺事件が発生。政府はついにこの地区の一掃を開始する。だが事件に裏があると嗅ぎ取ったレイト(ダヴィッド・ベル)は、親友で潜入捜査官のダミアン(シリル・ラファエリ)と再び手を組み、真相解明に挑む。
前作は、「やってることはすごいのにカメラがせわしなく動きすぎて失敗」の典型例。本作はそれより落ち着いた、素直な撮り方がなされており安定感がある。ただし、なぜかアクションの純度は下がった印象。この撮り方で前作並のアクションをやったら良かったのだが……。
ゴッホの絵を利用したカンフーの見せ場などは、力作ではあるがありきたり。オマージュの言葉に逃げず、もう少し新しいことをやってほしい。
個人的にはパルクールをもっと見たかったが、質量ともに少なめで物足りない。この映画からアクションを引いたら何もないのだから、どうしても大盛、特盛を期待してしまう。
なお、この映画の悪役がやっていることは、イラクで米国がしたことと同じで、イラク戦争に反対したフランスの映画らしい皮肉を利かせた構図、といえなくもない。その悪ふざけぶりは、ラストシーンとその後にいたるまで暴走し続け、こちらを楽しませてくれる。
前作の監督ピエール・モレルは、公開中の『96時間』でスタイリッシュなアクションを演出して大化けし、次回作が激しく期待される存在となった。彼からバトンタッチした本作の監督パトリック・アレサンドランは、赤ちゃんが父親に逆襲する「赤ちゃんの逆襲」(2003)を撮った、ブラックなユーモアセンスの持ち主。その個性が最後になって出てきた、ということか。
(前田有一)