◆パルクールの動き、格闘アクションのレベルが高く、ユーモアもあるリュック・ベッソン映画。前作に劣らず楽しめた(70点)
驚異的な身のこなしで屋根から屋根を渡り、窓から地面へ飛び降り、階段の手すりを乗り越えジャンプするエクストリーム・スポーツ「パルクール」。本作はパルクールに格闘技を交えたアクション映画「アルティメット」の続編だ。監督はパトリック・アレサンドランだが、前作と同様、リュック・ベッソンが製作・脚本を務めている。いわゆる「ベッソン映画」の一つといっていい。
舞台は2013年の3年後、つまり2016年のパリ。前作同様、微妙に未来なのが可笑しい。犯罪多発地区「バンリュー13」はコンクリートの壁で隔離され、チャイニーズ、黒人、スキンヘッド、アラブ、ジプシーらがグループを作って暮らしている。その中で、パトカーがならず者に銃撃される事件が勃発。警察と住民の間に緊張が高まり、やがて暴動へと発展していく。それがある組織の陰謀だと気付いたパルクールの達人レイト(ダヴィッド・ベル)とクンフーの使い手で潜入捜査官ダミアン(シリル・ラファエリ)のコンビは、バンリュー13のギャングたちと協力して、陰謀を打ち砕こうとする。
見所は何と言っても、スタントもワイヤーも使わない生身のアクションだ。ラファエリのマーシャル・アーツを見ると、フランス映画も香港に負けないレベルまで来たなあ、としみじみ思う。麻薬組織の取り締まり現場で格闘する場面では、高価なゴッホの絵を、表面は傷つけないように、クンフーの"武器"として使う、というアイデアが面白かった。
ベルのバルクールもやっぱり凄い。ちょっとした身のこなしにCGでは出せない本物の迫力を感じる。一連の動きの途中でカットを割っていても、体の切れが素晴らしいので、リアルに繋がって見えるのだ。街全体を使ったアクションには、ジャッキー・チェンの映画を見ているような興奮があった。
ラファエリが濡れ衣を着せられて逮捕・拘束され、ベルと一緒に脱出するシーンなどは、車がビルの中を走り、そのまま窓を破って外に出てくる。ここまでくると、ジャッキー・チェンも通り越して、バスター・キートンのスラップスティック・コメディ。お下げの髪に刃物を仕込んだ中国人ギャングの女ボス(エロディー・ユン)の格闘場面など、「おまけ」部分も手を抜いていない。
ラファエリ、ベルの2人に、主役としての華がないのが弱点だが、コンビで出ると余り気にならない。後半、話が大きくなりすぎたのと、主人公たちのいい加減な作戦が余りにもうまくいくので、緊張感には欠けてしまったが、ユーモアとアクションのバランスがとれて、前作に劣らず楽しめる作品だった。
(小梶勝男)