アリス・イン・ワンダーランド - 岡本太陽

◆ティム・バートンが生み出した新しいアリスの冒険物語(30点)

 ルイス・キャロル著のあまりにも有名な小説『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』(1951年には2つの物語を絡めたディズニーが映画『ふしぎの国のアリス』が公開)の続編にあたるディズニー映画『アリス・イン・ワンダーランド(原題:ALICE IN WONDERLAND)』は前2作のアイデアを継承し、鬼才ティム・バートン監督と、多くのディズニーアニメ映画の脚本を手掛けたリンダ・ウールヴァートンによって作られた新しいアリスの物語。今回のアリスは多感な19歳で、物語は彼女の不思議な冒険ではなく、彼女の内面により焦点が当てられる。よって本作はアリスが彼女自身が何なのかを探る成長物語となっているのが大きな特徴だ。

 憂鬱な表情を浮かべ、母親と馬車である場所に向かうアリス(ミア・ワシコウスカ)。その日は、彼女の婚約パーティが開かれる予定だった。しかし、会場で白うさぎを見つけ追いかけているうちに、うさぎの穴に落ちてしまうアリス。落ちた先はワンダーランドと呼ばれる頭の大きな恐ろしい赤の女王(ヘレナ・ボナム=カーター)が支配する世界。そこには国の年代記に記されている救世主アリスの出現を待ち望む者達がおり、赤の女王の妹である白の女王(アン・ハサウェイ)はアリスの助けを借り再び女王の座を手に入れる事を望み、帽子屋のマッドハッター(ジョニー・デップ)は赤の女王に復讐の炎を燃やしていた。本当にこのアリスは彼らが望んでいたアリスなのか!?いきなりワンダーランドにやって来た女の子は運命に巻き込まれてゆく。

 本作はハリウッドの超大作映画が次々と3D化されている波に乗り、「流行」を取り入れた旬の作品。しかし、やはりジェームズ・キャメロンの『アバター』を観た後では、本作の様なただ単に3Dを取り入れただけの作品は退屈にすら映ってしまう。ティム・バートンの世界観が3Dには相応しいだけに、それは非常に残念な所だ。また、本作のキャラクターたちがあまり魅力的に作り上げられていないのも不思議で、ジョニー・デップもメイクをたくさん施しているわりには特別な印象を与えず、アン・ハサウェイに関しては、ゴス系のメイクが全く似合っておらず違和感だけが漂う。ただ、赤の女王に扮するヘレナ・ボナム=カーターだけはその他のキャラクターを圧倒する存在感を放っている。

 19歳の時は、将来何か自分にとって意味のある事をしたいと望むが、大抵それが何なのか分からず悶々とする日々を送るもの。ディズニーは今回、アリスにワンダーランドでの体験を通して彼女に情熱を見出させようとするが、全ての事象が簡単に片付けられ、「成長物語」の説得力に欠ける。また、本の中で芋虫が煙草を吸ったり、「わたしを飲んで」と書いてあるクスリがあったり、おかしなティーパーティがあったりと、奇妙な世界が既に出来上がっているため、バートン氏独特のセンスが際立たず、新しい物語であるにも関わらず創造性を宿さない。その時点ではまだ「普通のアドベンチャー映画」という感想に留まるが、最後のディズニーからのメッセージ(オチ)には吐き気すら感じた。これを観る時間があるなら、今地球で起きている問題に自分なりに取り組んだり、子供と一緒に食事をしながら会話を楽しむとかした方が有意義な時間を過ごせるはず。

岡本太陽

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