ジュリアン・ムーアの名演で一層胸に迫る、若年性アルツハイマー病患者の主観映画 (点数 85点)
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ジュリアン・ムーアは、本作でアカデミー賞の主演女優賞を受賞。
過去にヴェネチア国際映画祭『エデンより彼方に』(2002)、ベルリン国際映画祭『めぐりあう時間たち』(2003)、カンヌ国際映画祭『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2014)で世界三大映画祭での主演女優賞制覇は女優史上初の快挙です。
本作の要である「超」主演、若年性アルツハイマーに侵され自らが闘いながらも転げ落ちてゆくアリスをジュリアン・ムーアが、まるで一人芝居のように強烈に演じきっています。
元々、幸薄いイメージのインテリ役がよく似合うジュリアンのために書かれたような脚本もお見事。
家族に恵まれている言語学者アリスの脳が少しずつ侵されてゆく病魔。
講義最中に語彙の欠落からはじまり、ジョギング中に自宅への帰り道を忘れ……病状の悪化を考え「自分へのメッセージ」をパソコンに残す絶望感。
白くソバカスだらけのジュリアンが青ざめてゆくのです。
若年性アルツハイマーは遺伝的要素の強いことをわかっていながら母を見詰めつづける娘と、いつまでも妻を愛しつづける夫の不憫さも伝わり、家族愛のドラマとしても品格のある展開をみせます。
高齢化社会が進み認知症が珍しい病でなくなった現代日本人も、認知症・アルツハイマー病を深く知るためにも本作の存在意義は大きいでしょう。
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若年性アルツハイマー病とは、40代~65歳までに発症した場合のことで、原因はほとんどが遺伝。老年期発症に較べ進行が早いといいます。
日本では若年性認知症は、認知症全体の3割を占めるそうです。
症状は何度も同じ事を言い、聞き、同じことをします。
置き忘れやしまい忘れが目立ち、化粧や買い物をしなくなり、以前熱中していたことに興味や関心をしめさなくなり、理解力や判断力が低下し、重度になると自分が誰なのかわからなくなるといいます。
本作のアリスがそのいくつかを体現し私たちにその苦悩を見せつけます。
今、観て「認知症・アルツハイマー症」を理解しておきたい映画です。
■ 2014年 アメリカ映画/上映時間:101分/監督:リチャード・グラッツァー、ウォッシュ・ウェストモアランド/出演:ジュリアン・ムーア、クリステン・スチュワート、アレック・ボールドウィン、ケイト・ボスワース、ハンター・パリッシュ
オフィシャルサイト:http://alice-movie.com/
(中野 豊)