アライブ-生還者- - 町田敦夫

◆墜落事故の生還者、72日間に渡る極限の記録(70点)

 ウルグアイを飛び立ったチャーター機がアンデス山中に墜落。生き残った者たちが人肉を食べて72日間を生き抜いたという1972年のニュースは、当時の世界に衝撃を与え、イーサン・ホークの主演映画『生きてこそ』(93)の題材ともなった。本作は50代を迎えた生還者たちや、当時の救助関係者へのインタビューを通じ、現場で何が起きたのかを改めて伝えようと試みたドキュメンタリーだ。

 ゴンサロ・アリホン監督は、35年後に語られた証言から、猟奇趣味とは無縁の団結と友情、そして生きようとする意志の尊さを浮かび上がらせる。混乱とパニックに始まり、捜索打ち切りをラジオで知ったことによる絶望、増えていく犠牲者、寒さと飢え、そして物議を醸すあの決断。生存者のうちの2人が、最後の望みをかけて4000メートル級の山塊を越えるくだりなどは、なまじなフィクションを吹き飛ばすほどのドラマ性と感動がある。

 16人の生還者が必ずしも真実を語っているとは考えなくていいだろう。自分や仲間の行為を正当化するために、多少の歪曲は交えているかもしれない。それでも、仲間の遺体を「使わせてもらった」と表現する彼らの謙虚さや感謝の念にウソはないように見える。生還者の1人が語った「遺体を使う許しがほしかった。だから生き残った仲間たちと『自分が死んだらその遺体を使ってくれ』と約束し合った」という言葉に、そんな気持ちの一端が表れているように思う。

 遺体を「使われた」者たちの遺族もまた善意に満ちている。作品の終盤、彼らが生還者と共に事故現場に赴き、手を取り合って祈りを捧げるシーンがあった。そこで恨み言ひとつ言うでもなく、むしろ「お役に立てて故人も喜んでいますよ」的な発言をする彼らの寛大さには、我知らず目頭が熱くなった。

 それにしても不思議なのは運命の配剤だ。「座席1つ違うだけで生死が分かれた。一方は死に、一方はほとんど無傷。神は何を基準にそれを分けるのか?」という生還者の疑問は、そのまま私たちの疑問でもある。ついでに言うなら、九死に一生を得た16人の生還者は、三十数年が過ぎた今もなお、全員が存命だという。50代にもなれば1人や2人、病気や事故で欠けていても不思議はないように思えるが、神様、あなたは本当に気紛れだ。

 ここで引用した以外にも、極限状況をくぐり抜けた者たちの証言には含蓄のある言葉がいっぱいだ。ナレーションや字幕での説明がないので事実経過やそれぞれの生還者の人となりはわかりづらいが、そのあたりは『生きてこそ』で確認し、本人たちの心の内面を本作で知るという見方をお勧めしたい。

町田敦夫

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