少女の誘拐事件解決のために走り回る外交官と犯人グループの虚々実々の駆け引きは息をのむ緊張感。しかし、後半のあまりにも杜撰な展開に稚拙な脚本が馬脚を現す。無理やりなこじつけに近い犯人グループの計画には呆れてしまう。(40点)
壮大な世界遺産と切り立った崖に張り付くように建物が並ぶ美しい海辺の町、古代ローマから連綿と続く石造りのインフラにあらためて息をのむ。そんなイタリアの魅力をたっぷりと引き出しつつ、日本人少女の誘拐事件解決のために走り回る外交官と犯人グループの虚々実々の駆け引きは息をのむ緊張感。非常にカネがかかったスケールの大きい作品ではあるが、後半の杜撰な展開に稚拙な脚本が馬脚を現す。強引というより無理やりなこじつけに近い犯人グループの無謀な計画には呆れて声も出ない。
ローマで開かれるG8の警護のために派遣された外交官の黒田は、観光客の紗江子の娘・まどかの誘拐事件に巻き込まれる。伊語堪能な黒田は犯人グループとの交渉役に当たり、身代金を持った紗江子とともにローマ市内を走り回る。
監視カメラを効果的に使い、警察や黒田を出し抜く犯人側の手口と、それを見破り事件の核心に近づいていく黒田。このあたりはミステリーとしてよくできていて、次々と繰り出される謎とスピーディな構成は息をのむ。犯罪を成功させるのにまず警備会社を攻撃するという発想にもうならされた。しかし、犯人側が徐々に正体を現すにつれ、彼らのテロ行為が偶然に頼りすぎるバカげたシロモノであることが明らかになっていく。
犯人側の本当の狙いは日本の外務大臣なのだが、彼と紗江子母娘の訪伊スケジュールをどうやって合わせたのか。また、捜査側が監視カメラの映像への細工を気づき、警備会社の中枢部に入り込むのは計算に入れていたのだろうが、そのコンピュータのセキュリティを解除するために紗江子を送り込むなどというのは、もはや何をかいわんや。娘のためなら殺人も厭わない母の気持ちを犯人が利用するのはわかるが、一介の看護師に拳銃で警備会社を脅迫させるなど成功の可能性があまりにも低く、こんな不確定要素に頼りすぎの作戦に命をかける犯人たちの気がしれない。そもそも外務大臣なら、日本にいる時のほうがよほど復讐の機会があると思うのだが。それに、アマルフィには何しに行ったのだ? 大臣の予定が一日延びたから時間つぶしをしたことになっているが、外交官の特権の如くロケ隊も予算を使い切りたかっただけなのでは。。。
(福本次郎)