デンマーク映画、マッツ・ミケルセン主演(85点)
2003年に『しあわせな孤独』というデンマーク映画を観た。非常に感銘を受けた映画だ。この映画を監督したのはスサンネ・ビアという女性。近年素晴らしい才能を持った女性監督が次々と世に出ているが、彼女もその一人だ。そして彼女の最新作『アフター・ウェディング』が今春公開された。
人間ドラマを撮らせたら卓越した才能を発揮するスサンネ・ビアが今回も『しあわせな孤独』同様、複雑な人間ドラマを描いている。リアリティを追求してはいるがあくまでもドラマチックに仕上がっている。ストーリーの中で秘密がどんどん暴かれていくのだが、それが切なくも痛々しくてホロリとしてしまう場面がいくつかあった。この映画は2007年のアカデミー賞外国語映画賞にデンマーク代表映画としてノミネートされており、改めてこの映画の凄さを痛感した。
主人公ヤコブはインドで孤児院を運営している。だが運営する資金がないためその孤児院は閉鎖に追い込まれようとしている。そこでヤコブは彼の故国であるデンマークに戻り、資金援助を求めにヨルゲンという男に会う。ヨルゲンはデンマークの富豪であったため、ヤコブは彼に後ろ盾になってもらおうとする。彼らがはじめて対談した際、ヨルゲンは ヤコブを娘の結婚式に招待する。ヤコブは何の疑いもなく、結婚式に出席するのだが、思わぬ出来事がそこに待っているのだった。そしてそれは ヤコブの人生を永久に変えてしまう。
主人公ヤコブを演じるのはマッツ・ミケルセン。わたしは『しあわせな孤独』で初めて彼を見たのだが、最近彼は『007 カジノロワイアル』にも出演しているので知っている人もいるかもしれない。わたしの観た限りの映画では彼はあまり表情を大きく変えない。なので少々冷たい印象を与えるが、非常に雰囲気のある俳優だ。今後デンマーク以外の国でも多くの出演オファーを受けることは免れないだろう。なんとなく日本でいうところの豊川悦司みたいな感じだろうか。
今年すでに多くの映画を観たが、今の所この映画に一番感情を掻き乱された気がする。単に心を揺さぶる映画ではない。この映画は感情を掻き乱す。エモーショナルすぎるといえるかもしれないが、わたしは完全にノックアウトされた。観終わった後の余韻が凄かった。とんでもないものを観た気がしてならなかった。たった何人かの人物が登場する映画の世界がこんなにも観る人に刺激を与える。久しぶりに映画って凄いものだなと感じた作品だった。
(岡本太陽)