アバター - 福本次郎

◆緑濃い木々、色鮮やかな花、地を覆う輝く苔、そして動物たち。先住民は生活に恩恵をもたす動植物と神経線維を接続して意思の疎通を図るという設定が、地球を破壊してきた人間との決定的な違いとなり、エコロジーを前面に訴える。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 鬱蒼と育った森は天高く生い茂り、絡み合った枝や蔓が空中に張り巡らせた迷路のような道を形成している。緑濃い木々、色鮮やかな花、地を覆う輝く苔、舞い落ちてくる木の精、野生の獣たち、そして先住民。生けとし生きるものは魂のレベルでつながりを持っていて、お互いの命を尊重しながら暮らしている。壮大なパノラマで描かれたユートピアの人々は、科学や文明を否定し自然と共生する道を選ぶ。それはテクノロジーの進歩の先にあるものではなく、満ち足りた環境が保証してくれる安寧だ。先住民は生活に恩恵をもたらしてくれる動植物に神経線維を接続して意思の疎通を図るという設定が、地球を破壊してきた人間との決定的な違いとなり、映画はエコロジーを前面に訴える。

 惑星パンドラの先住民・ナヴィと人間のDNAから作られた分身は、海兵隊員・ジェイクの意識と同調され、ナヴィの村に送り込まれる。その使命は現地の希少地下資源獲得のためにナヴィたちを立ち退かせること。しかし、ジェイクはナヴィ族長の娘と恋に落ちる。

 ジェイクの本体は下半身不随で、萎えてやせ細った足にもどかしい思いをしている。そんな彼が分身という健康な肉体を手にいれ喜びの余り走り回る。足の指の感覚を確かめ、車いすから解放されたことで、自由を存分に楽しむ。やがてそれはナヴィの村で過ごし戦士としての修業を積むうちに彼らの自由と独立を守る決意に成長していく。このあたり、筋金入りの海兵隊員だったジェイクの心境の変化に説得力が弱く、スパイ活動中に敵と恋に落ちるなどあまりにも通俗的だ。その後地球人とナヴィの一大決戦をむかえるが、地上では装甲車と重装歩兵対騎馬軍団、空ではジャイロ機対翼竜の攻防は、大スクリーンいっぱいに広がる壮大な戦国絵巻。だが、戦術面での驚きは少なく、感情移入している登場人物が危機に立つ時のハラハラ感にも乏しかった。まあ、圧倒的な情報量に退屈はしなかったが。

 結局、開発の名を借りた帝国主義は敗北し、貪欲な人間は凶暴な怪物を連想させる「エイリアン」と呼ばれパンドラを追放される。ただ、ありきたりな勧善懲悪に陥るよりも、むしろナヴィが滅ぼされたほうが問題提起になったと思うのだが。。。

福本次郎

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