アニエスの浜辺 - 福本次郎

少女の感性をそのままに齢を重ねた老映画作家が、心に浮かんだイメージを徒然なままに映像化する。それは美しい詩のようでもあり、一瞬を切り取った写真のようでもある。彼女の人生を記録と記憶の再構築で想像力豊か再現する。(50点)

 まるで少女の感性をそのままに齢を重ねた老映画作家が、心に浮かんだイメージを徒然なままに映像化する。それは美しい詩のようでもあり、一瞬を切り取った写真のようでもある。彼女が自らの人生を振り返るにあたり、多くの人と出会い、欧州とハリウッドをまたにかけ、ユニークな経験をする。その思い出の数々を、記録と記憶の再構築で想像力豊かに表現していく様は、まさにマジック。彼女のアーティストととしての波乱に富んだ生涯と、人間としての愛に満ち溢れた実生活がコラボする。

 80歳になるアニエス・ヴァルダは、ベルギーに生まれ、10代で家族とともに南フランスに移り住む。やがてパリの美術学校に入り写真を学びフォトグラファーとして活躍、その後映画の世界に飛び込み時代の先端を駆け抜ける。彼女の評判は米国にもおよび、彼女はハリウッドに招へいされる。

 しなびた海藻が打ち上げられた季節外れのビーチに、さまざままな形の鏡を並べ、波を、砂を、空を切り取った構図は、アニエスの心象風景そのもの。虚像のような現実と現実のような虚像、彼女が命を捧げてきた映画とは創作ををリアルに見せ、彼女が生きてきた映画界は耳目を疑いたくなるようなことが起きる世界。冒頭のワンシーンだけで虚実皮膜の間を行き来してきた彼女の半生をイマジネーション豊かに物語る手腕は見事だ。

 映画はさらに彼女の脳裏に去来する直観の数々をスクリーンに投影する。連想に続く連想、一貫性を欠いた問わず語りは時間も空間もあちこちに飛び、もはや夢を見ているような脈絡のなさ。しかし、その妄想のごときビジョンをある時はアーカイブから探し出し、ある時はセットを組んで撮影する。自分の観念を具象化するという一点において、すさまじいまでに発揮されるエネルギー、だが見る者にはそれを受け止められるだけのパワーが要求され、恐ろしい疲労感が襲ってくる。「記憶と映像は混ざり合い、映像は残る」という最後の言葉が、この作品のいかようにも解釈できる本質を突いているが、少なくとも一般にも公開するのなら、もっとわかりやすく整理するべきではないだろうか。彼女のファンは理解できたかもしれないが。。。

福本次郎

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