◆死んだはずのあの男が帰って来た!超過激エンターテイメント!(75点)
『アドレナリン』の主人公シェヴ・チェリオスはヘリコプターから落下した後、ロサンゼルスの街のど真ん中を走る車に激突し、地面に叩き付けられた。チェリオスの生死は謎のまま終わった前作から3年、チェリオスは生きていた!(もちろん!)というところから続編『アドレナリン:ハイ・ボルテージ(原題:CRANK: HIGH VOLTAGE)』は始まる。直ぐさま黒いトラックで中国系ギャングが現れ、瀕死のチェリオスを車の中へ放り込み連れ去る。前作では中国産の毒を体に注入され凄まじい物語が展開しただけにそれを連想させる様なオープニングだ。
それから3ヶ月後チェリオス(ジェイソン・ステイサム)はある中国人ギャングが管理する施設で目を覚ます。朦朧とする中なんと彼の心臓が取り出され、その代わりにある機械が埋め込まれる。気を失うチェリオス。彼が再び目を覚ました時は、ペニスを含む他の臓器も取り出されようとしていたが、殺し屋の本能が覚醒し、うまくそこを逃げ出す。しかし途中で力が抜けてしまう。彼が持つ心臓の代わりになる機械は電気で動く仕組みになっており、充電が必要なのだ。ジョニー・ヴァンという男が運ぶチェリオスの心臓と電気を求め世界で最も運の悪い殺し屋が再び暴れまくる。
チェリオスはほんとうに可哀想な男だ。3ヶ月眠っていた以外は走り続け死ぬ目に遭っているのだから。マーク・ネヴェルダインとブライアン・テイラーが再び監督を手掛けるシリーズ第2作目でもチェリオスの行く手にはあり得ない展開が待っており、観るものを魅了する。加え、前作よりもアニメっぽくなっている事が顕著な特徴だ。というのも本作はデジタル撮影されており、監督達が思いつく限りいろんな事に挑戦しているのだ。言わば本作は観客よりも監督達自身が楽しむために撮られた様なもので、これはもうアクション映画ではなく、アクションのあるコメディ映画という位置付けが正しいだろう。
この映画の展開はほんとうに予想外だった。前作で死んだカイロ(エフレン・ラミレッツ)には双子の兄弟が存在し、『カポーティ』や『バベル』のクリフトン・コリンズ・Jr.が以外な形で登場する。また高圧の電流を食らったチェイオスとジョニー・ヴァンの決闘シーンは何故か『ゴジラ』にインスパイアされたセットで行われる。普通の人間なら高圧電流を浴びたら死ぬが、さすがチェリオス、彼はハイになり幻覚を見る。
チェリオスは前作でエイミー・スマート扮するイヴに伝言を残した。しかし、それを聞いてなかったイヴは今回ストリッパーとして登場する。エイミー・スマートの吹っ切れた新しいイヴの演技が男性には好感度大で、彼女は乳首にテープを貼り付けただけという超大胆な姿も披露している。それからもう1人の女性キャラにバイ・リンが扮しているから怖い。彼女はリアという中国人娼婦を演じており、「素ですか?」と思ってしまうクレイジーさを呈している。普段からよく特異なキャラを演じる事が多い彼女だが、今回は究極を見せられている気にさせられるだろう。
そしてやはりこの映画はジェイソン・ステイサム無しでは語れない。悲惨な境遇にあるチェリオスを真剣そうに見えて面白可笑しく演じているユーモア溢れる彼は、今回電気を通すの犬の首輪を付け「ワンワン」とゲイカップルに吠えたり、老女を背後から攻めたり、もう何でもあり!これだから彼の出演作はいつも楽しみなのだ。また忘れていけない事がある。『アドレナリン』と言えば中華街での公衆の面前でのセックスシーン。『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』では、ジェイソン・ステイサムとエイミー・スマートは競馬場で動物になってしまう。しかも前作よりも過激。そんな素敵なアイデアがたくさん詰まった本作は是非友達と劇場で野次を飛ばしたり(監督達の望み)爆笑したりしながら楽しみたいぶっ飛んだエンターテイメントだ。
(岡本太陽)