アドレナリン:ハイ・ボルテージ - 小梶勝男

◆下品、エロ、残酷、暴力、スピードと全てが過剰なバカ映画。「トランスポーター」シリーズよりこっちの方が面白い(74点)

 前作で「アドレナリンを出し続けないと死ぬ」毒薬を注入された殺し屋が、今度は充電し続けないと止まってしまう人工心臓を移植されてしまう。

 「バカ映画」と呼ぶにふさわしい「アドレナリン」の続編。今回も、ヘリコプターから落ちても何故か死んでいない、という冒頭から、バカバカしさは加速していく。

 とにかく人工心臓を動かすため、体に電気を通さなければならない。車のバッテリーから延びたコードを舌と乳首に挟み、スタンガンを自分に押しつけ、明らかに危なそうな電柱の「箱」(たぶん開閉器だろうと思うがよく分からない)も開いて手を突っ込む。演じるジェイソン・ステイサムがクールであればあるほど、その暴走ぶりは際立っていく。

 人間同士の「摩擦」で電気を起こそうと、競馬場でお婆さんの背中に体を擦りつける爆笑シーンから、レースの最中にトラック内で恋人(エイミー・スマート)と摩擦のためのセックス。下になった女性の眼に、2人を飛び越えていく競走馬の巨大な一物が映る。悪ノリし過ぎ、やりたい放題だ。

 奪われた心臓を追って、弾丸も血飛沫も大量に飛び交い、どんどん死体が増えていく。血まみれの心臓移植や、乳首をナイフで切り取る場面など、残酷描写も極めてリアル。そして、目まぐるしく移り変わる映像の猛烈なスピード感。下品、エロ、残酷、暴力、スピード。すべてが過剰で、その過剰さには感動すら覚えてしまった。

 この世界は三池崇史やクエンティン・タランティーノに通じるものがある。状況のバカバカしさを、描写のリアルさが引っ繰り返し、描写のリアルさを、状況のバカバカしさが引っ繰り返す。その絶え間ない逆転の中にだけ、この過剰な面白さが生まれるのだろう。

 本作で描写のリアルさを支えているのが、小型の家庭用ビデオカメラによる撮影だ。カメラを壊す危険のある場面では、この家庭用カメラを使い、壊れるとどんどん補充する「使い捨て」方式で撮影したという。走る車につかまりながらの撮影などにこの方法が用いられた。また、家庭用カメラで撮られたと思われる場面も、そこだけ映像が劣化しているようには見えなかった。他の部分とほとんど遜色ないように感じた。デジタルをフィルムのように見せる技術も進歩しているのだ。こうして、臨場感溢れる映像が可能になった。

 本作に登場する水槽の中で首だけで生きている人間は、カルトホラー「美しき生首の禍(死なない頭脳)」(1962)を思い出させる。裸の女たちとの銃撃戦は、70年代の様々なB級アクション映画を髣髴させる。前作に続きメガホンをとったマーク・ネヴェルダインとブライアン・テイラーの2人は、その辺りを意識したのだろうか。

 「トランスポーター」シリーズのカッコいいステイサムしか知らないと、ショックを受けるかも知れない。でも、こっちの方が絶対に面白い。バカカッコいいステイサムは、本当に生き生きとしている。

小梶勝男

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