多彩な人殺しテクニックはもはやアートの域に達し、見る者を戦慄と恍惚にいざなっていく。(点数 50点)
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骨がぶつかり関節がきしみナイフが肉を抉る。プロの殺し屋同士の洗
練された素早い攻撃と防御の応酬は瞬きもできない緊張感にあふれる。
一方で彼らをとらえるカメラワークは、殺し合いとは思えないほど流
麗な上、効果音や音楽を廃し格闘描写に徹した映像は端正でスタイリ
ッシュ。閉ざした心と強靭な肉体を持った男が再び己の本能に火をつ
けたとき、すさまじい殺戮のオペラが奏でられる。他人を拒絶するよ
うな悲しい目をした寡黙な主人公をウォンビンがクールに演じている。
【ネタバレ注意】
質屋のテシクは隣人からバッグを預かるが、そこにはマンソク兄弟の
麻薬が隠されていた。回収に来た子分をテシクは返り討ちにするが、
隣人の娘・ソミを人質に取られた上、罠にはまり逮捕されてしまう。
チンピラだけでなく警察官たちも一瞬で片づけてしまうテシク。国家
に殺人マシンとして訓練された技のキレは、映画向きの派手さこそな
いが、体のあらゆる部位を利用して相手の急所を確実につぶすリアル
なもの。さらに斧やナイフ、三日月形の小刀まで使いこなし、それら
の多彩な人殺しテクニックはもはやアートの域に達し、見る者を戦慄
と恍惚にいざなっていく。
テシクがソミを救出すべくマンソク兄弟に迫っていくが、他方刑事た
ちに追われている。だが、「ウォンビンの映画」なのだから彼のカッ
コよさを前面に出し、その超人的な強さを見せることに専念したほう
がより刺激的だっただろう。
(福本次郎)