◆ビジュアルは相変わらずハイ・クオリティ(55点)
鬼才・押井守の久々の実写映画には、監督がこだわる美しい女戦士と銃器に対するフェティシズムが満載だ。舞台は、アヴァロン(f)と呼ばれるゲームの仮想空間。荒廃した砂漠を模した場所で、突然変異で生まれた巨大モンスター“マダラスナクジラ”を仕留めるべく、3人の女ハンター・グレイ、ルシファー、カーネルと、強力な武器を持つ一匹狼の男性ハンター・イェーガーが、パーティーを組むことに。はたして彼らは敵を倒しポイントをゲットできるのだろうか…。
黒木メイサ、菊地凛子、佐伯日菜子がそれぞれセクシーで個性的なコスチュームをまとった女ハンターに扮し、時に素手で戦い、時に銃をぶっ放す様は文句なしに絵になる。うねる蛇のようなスナクジラの造形も見事。ビジュアルは相変わらずハイ・クオリティだ。だが、ストーリーを追うにはコツがいる。まずゲームの世界観は映画「アヴァロン」に、女ハンターたちも過去の押井作品にリンクしている。それらを見ていない観客が作品を楽しむには、物語を追うのは潔くあきらめ、ひたすら視覚的な快感に身をませるのが正解だろう。一方、押井作品に精通するファンにとっては、時折挿入される二宮金次郎の像のように、意味深なようで意味がないような細部を独自の視点で分析するマニアックな楽しみがある。かつてないほどの激しい闘いの果てに、皮肉な仕掛けを施して、バトルはまだ終わらないと示唆。飛び立つ女戦士たちと地上で吠える男性ハンターの構図に押井監督の男女観を見るのもいいだろう。虚構の中の闘いが永遠に繰り返されるスパイラルもまた、監督がデビュー以来、ずっとこだわってきたファクターだ。セリフがなくパントマイムのような動きで演じた菊地凛子の存在感が際立っで面白い。
(渡まち子)