◆注目したいのは女三人の衣装と武器(60点)
アニメ映画で世界的に注目されている押井守監督が『Avalon アヴァロン』以来、約八年ぶりとなる実写映画を完成させた。
仮想空間である“アヴァロン(f)”内の荒野デザート22に現れるスナクジラというモンスターを、撃ち仕留めるゲームが繰り広げられていた。参加者は狙撃手のグレイ(黒木メイサ)、カラスに変身できる魔術師ルシファ(菊池凛子)、女騎士カーネル(佐伯日菜子)の女三人と対戦車砲を担いだイェーガー(藤木義勝)という男の四人。ある日、伝説と言われるマダラスナクジラを仕留めるべく四人は手を組むが…。
殺風景で虚無感が漂う荒野の活写、ヘビを巨大化させたかのようなビジュアルで誰もが知っているようなクジラとはほど遠いスナクジラ、なぜ出てきたのかが理解し難い二宮尊徳像やカタツムリ、犬といった個々のシーンで印象に残るモノが多い。
それよりも注目したいのは、女三人の衣装と武器だ。とにかく三人の戦闘服姿は実にカッコよくて魅力的だと言い切れる。特に男性の方は、要チェックだ。また、女三人だけでなく、藤木義勝扮するイェーガーも注目すべきだ。男臭さを感じさせるワイルドな風貌で砂漠をさすらう一匹狼は、素直に好漢だと言って良いだろう。
見せ場はスナクジラ狩りで観られる派手な爆破や銃撃であり、それなりに面白く仕上がっているように思えるが、くれぐれもハリウッド製アクションのような出来栄えを期待しないようにと言い切りたい。そのような期待を抱いて観ると肩透かしを喰らうこと間違いなしだ。
また、劇中ではゲームが繰り広げられているということで、後半ではゲームらしい面白さが感じられるシーンが用意されている。それは、グレイとイェーガーの格闘バトルだ。作り方はTVゲームやゲーセンの格闘モノを彷彿させ、少しユニークな出来栄えだ。劇中のアクションシーンの中では突出して面白味が発揮されているため、かなり楽しめる上に印象深い。
上映時間は70分と短めだが、作風やテンポ等を考慮するとこれぐらいの時間で上等だと言い切れる。
(佐々木貴之)