もはや自身の判断にも自信が持てなくなっている様子がリアルだ。(点数 50点)
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偶然なのか必然なのか、一度芽生えた疑念は男の心を切り苛み、仲間
への信頼を蝕んでいく。真実は探せば探すほど遠ざかり、暗雲は制御
できないほどに大きくなっていく。事故に見せかけた謀殺を生業とす
る“仕事人”たちが、ある一言がきっかけで自滅していく様子が、ジ
リジリと炙られるような不快感を伴って描かれる。裏切り者が誰かは
わからず、信じられるのは己だけ。いや、もはや自身の判断にも自信
が持てなくなっている様子がリアルだ。
【ネタバレ注意】
4人組の殺し屋グループは車いすの老人を感電させて殺す。ところが、
仲間の1人が暴走バスにはねられて落命したことから、リーダーのホー
は情報漏れを疑い始める。
プロローグ、ターゲットを細い路地に誘い込み、あくまで事故死を偽
装するホーたち。あまりに手の込んだ仕掛けは不確定要素が多すぎ、
だれも故殺とは思わない。老人の暗殺も雨中電線にひっかけたタコ糸
に触れさせようというもの。当然、万全を期した計画は何度も延期を
余儀なくされ、ホーたちは何夜もひたすらチャンスを待つ。だからこ
そ予定外の出来事に、逆に狙われているのは自分たちではないかとい
う邪念にとらわれていく。殺し屋の身の上に起きる不運が偶然である
はずがない、危険を察知したホーは反撃を試みる。
孤立無援の中、自己増殖した妄想に押しつぶされていくホーの焦りと
いら立ち、その息苦しいまでの心理状態が丁寧に掬い取れていた。
(福本次郎)