夫婦愛の形を借りた芸術残酷物語 (70点)
夫婦愛の形を借りた芸術残酷物語だ。画家の真知寿(まちす)は妻の支えで絵を描き続けるが、まるで評価されない。やがて夫婦は奇行に走るようになる。絵のことしか頭にない真知寿と彼がとり憑かれている芸術は、いわば怪物。献身的な妻でさえ、夫がアーティストでなかったらここまで彼につきあったかどうか。主人公の周囲の人が次々に死ぬのが象徴的で、芸術は麻薬のように中毒になる。それは映画も同じで、流行に翻弄される風潮を北野流ギャグで批判するスタイルが素晴らしい。取って付けたようなハッピーエンドは芸術へのリバウンド。薄気味悪くも鋭い作品で、油断禁物だ。
(渡まち子)