アウトレイジ - 渡まち子

アウトレイジ

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◆大量のセリフと怒号が飛び交うこの群像劇には、キタノ映画に初参加の俳優の顔触れが功を奏して、新鮮な“男の映画”の趣がある(65点)

 ヤクザ社会の下剋上をすさまじい暴力描写で描く、温故知新のキタノ映画だ。関東一円で勢力を張る巨大暴力団組織・山王会組長が、直参である池本組の組長・池本に直系でない村瀬組を締め付けるように命令する。池本にとって村瀬は兄弟分。池本はその厄介な仕事を配下である大友組の組長・大友に押し付ける。そのことが、非情なヤクザ社会で、裏切りと駆け引きの壮絶な権力闘争の幕を切って落とすことになる…。

 ヤクザ世界を描くことや暴力描写は北野武監督の原点である。だがここにはかつてのキタノ映画に見られた静謐なムードは微塵もない。大量のセリフと怒号が飛び交うこの群像劇には、キタノ映画に初参加の俳優の顔触れが功を奏して、新鮮な“男の映画”の趣がある。全員が極悪非道(アウトレイジ)という設定だが、監督自身が演じる大友のキャラクター造形が面白い。弱小組織の組長・大友は、サラリーマンでいう中間管理職のようなのだ。上からは無理難題を押し付けられ、下に対しては何かと面倒を見て気を配らねばならない。なんともやるせない立場で、ため息ものだ。もちろん、エゴイズム丸出しのヤクザ社会の中に、キタノ節である、とぼけた笑いも。キャラクターは皆、見事に立っているが、中でも加瀬亮が突出している。今までのナイーブで草食系のイメージを払拭する、知性の中に狂気を秘めた凶暴な役柄を見事なキレッぷりで演じている。最後の最後に見せる表情は、なんとも気味が悪い怖さを漂わせていた。残酷描写の連打に目をそむけたくなることも多かったが、それでも北野監督が暴力の世界をリロードして臨む、ニュー・バイオレンス映画には、圧倒的な迫力がある。

渡まち子

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