物音に脅え、見えるはずのない光景に追われ、悪夢にうなされる。そんなヒロインの感じる恐怖をリアルに再現するのだが、あらゆる表現が過剰で怖さよりも不快感ばかりが先に立つ。もう少し上品にまとめてもよかったはずだ。(40点)
© LIONS GATE FILMS INC. AND PARAMOUNT VINTAGE, A DIVISION OFPARAMOUT PICTURESCORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED
こけおどしの映像にショッキングな効果音、さらに不気味なBGMで緊張感を盛り上げる手法はB級ホラーのセオリーを踏襲する。物音に脅え、見えるはずのない光景に追われ、悪夢にうなされる。そんなヒロインの感じる恐怖をリアルに再現するのだが、あらゆる表現が過剰で怖さよりも不快感ばかりが先に立つ。せっかくソロ演奏もこなすほどのバイオリニストを主人公にしているのだから、もう少し上品にまとめてもよかったのではないだろうか。
少女時代に事故で失明したシドニーは、角膜移植手術を受けて視力を取り戻す。その後、悪霊や幻覚に苦しめられるようになり、原因が角膜のドナーにあると思い立つ。シドニーはドナーの死の真相を探すために、医師のポールとともにメキシコの寒村に出向く。
ドナーの記憶や意思・能力が角膜とともにシドニーに乗り移ったために死人や死神が見え、現実となってシドニーに降りかかる。最初のうちは「目が見えることに脳が慣れていない」とポールや姉にも相手にされない。そんなとき病院で知り合った少女が死の寸前にあいさつに来たことから、死人が自分の前に現れるのは何かを訴えたいからだとシドニーは気づく。首つりと燃え盛る炎のビジョンが暗示するドナーの真意、シドニーはそれらの謎を解こうとするのだが、そんなものを見せなくても、ドナーが幽霊になって彼女の前に現れれば済むはずだ。
結局、ドナーに悪意などなかった上に大惨事から大勢の人々を救う。前半の不快感をラストで一気にぬぐい去り、大いなる救済をもたらす後味の良い作品にはなっている。だが、元ネタのタイ映画自体が様々な過去の作品の剽窃と模倣をつなぎ合わせたシロモノだっただけに、このリメイクに何か新しいアイデアを盛り込んでほしかった。ただ舞台をアジアからアメリカに移しただけというのは少し寂しすぎる。
(福本次郎)