アイガー北壁 - 福本次郎

◆目まぐるしく変化する山の表情を前にして、己の知識と経験、そして肉体を頼りに頂上を目指す。垂直に切り立った絶壁で重力を克服し、氷雪と風がもたらす最悪のコンディションと戦い、凍傷の痛みに耐える姿が生々しく再現される。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 雲ひとつない満月の夜、足元さえ見えない濃霧、容赦なく吹きつける極寒の猛吹雪。目まぐるしく変化する山の表情を前にして、己の知識と経験、そして肉体を頼りに頂上を目指す。しかし、当時の装備では気まぐれな風雪に対抗するには十分とはいえず、挑戦者たちは無残にも命を落とす。垂直に切り立った絶壁で重力を克服し、氷と雪と風がもたらす最悪のコンディションと戦い、凍傷の痛みに耐え、それでもわずかな生存への望みをかけるクライマーたちの姿が生々しく再現される。

 1936年、アイガー北壁初登頂の栄誉を求め各国登山隊がしのぎを削る中、ドイツ人のトニーとアンディも山麓にキャンプを張る。快晴の深夜、2人は出発、すぐにオーストリア隊のヴィリーとエディが後を追ってくるが、落石でヴィリーが負傷する。

 ドイツ人新聞記者がナチスの国威発揚のため初登頂を利用しようとして麓のホテルから望遠鏡でトニーとアンディを追う。彼はディナーで同席したオーストリア人カップルにドイツ民族の優位性を延々と説くほどの熱心なヒトラー支持者。この男が国粋主義的であるのとは対照的に、トニーとアンディはただ山を愛するだけの若者。名誉欲はあっても、国のため民族のためという気負いはなく政治とは一線を引いている。そのあたりの当時のドイツの世相が興味深かった。

 切り立った崖にハーケンを打ちこみ、ザイルで岩肌を水平方向に走り、わずかな足がかり頼りに少しでも高みに登ろうとするトニーたちの姿をとらえるカメラが素晴らしい。目もくらむような場所にいる彼らと同じ位置に立ちその高さを実感させるとともに、極限の状況に追い込まれたときの決断や苦悩の表情を余すところなくとらえている。結局、悪天候のため途中下山を決意した4人は次々に命を落とす。最後まで救助を信じたトニーもあとわずかのところでザイルが足りず、思いを寄せる女性カメラマンの目の前で力尽きる。人間の思惑など無情にはねのける、そんな自然の力を圧倒的な迫力で描き切っていた。

福本次郎

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