◆豪華だが物語に物足りなさを感じてしまう第二作目(50点)
2008年の第一作目と同じくアメリカのサマームービーの先陣を切って封切られたアメリカン・コミック原作の『アイアンマン2(原題:IRON MAN 2)』。主人公トニー・スタークは細々と俳優活動を行っていたロバート・ダウニー・Jr.をスターとして復活させ、その後の彼の俳優としての人生を大きく変えた。ダウニー・Jr.の演技というよりは彼の人柄が皮肉的でチャーミングな完璧な主人公像を作り上げ、人々は新しい物語でのあのトニー・スタークを待ち焦がれた。
前作でトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)は自らをアイアンマンであると公表し、勝手に紛争鎮圧をし始めた。本作では会社そっちのけでその事ばかりに気を取られる彼にペッパー(グウィネス・パルトロー)は不信感を抱き、彼のヒーロー的行為に政府は異議を申し立て、パワード・スーツを没収しようとし、一方でロシア人のウィップラッシュ(ミッキー・ローク)がトニーの前に立ちはだかる。ライバル武器製造会社社長のジャスティン・ハマー(サム・ロックウェル)も台頭し、山ほどの試練を与えられるトニーだが、そんな中、胸に埋め込んでいるリアクターが出す毒素に苦しみ始める…。
前作では監督を俳優のジョン・ファヴローが手掛けたが、本作では監督を再びファヴローが、脚本を『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』等で知られるこちらもまた俳優のジャスティン・セローが手掛け、今回は成功している2人の俳優がタッグを組んだ。ベン・スティラーと共同執筆した『トロピック・サンダー』で脚本家デビューしたセローは、今回トニー・スタークと早くに逝ってしまった父、ウィップラッシュと報われなかった父、という「父と息子」というテーマを軸に、『アイアンマン2』を前作よりも遥かにスケールの大きいアクションを盛り込んだ物語に仕上げている。
アイアンマンのパワード・スーツは今回もまた物語の中で変化を遂げ、今回は前回までのマーク3を軽量化したマーク4から登場する。改良は重ねるものの胸のリアクターから出る毒素がトニーを悩まし続け、その問題が父と息子というテーマの物語と徐々に重なってゆく展開が非常に賢い。リアクターは言うなればトニーの心。彼の心に変化が起きるとき、物語も急展開を迎える。
第一作目の成功により、敵役のミッキー・ロークをはじめ、スカーレット・ヨハンソン、ドン・チードル、そしてサミュエル・L・ジャクソンと素晴らしい俳優達を動員した本作。それに加え、最新技術を駆使した迫力の映像が我々の心を躍らせるが、残念な事に映画の雰囲気は前作と全く同じ。ダークだった『X-メン』がアクションの要素を大幅に増やし『X-MEN2』となり、ファンタジー色が強かった『バットマン・ビギンズ』が極上のクライムドラマへと変貌を遂げた『ダークナイト』の様に、第二作目は第一作目を開花させる役割を果たす。『アイアンマン』の世界観を冒険させたリスキーな作品であったら技術以外の進化を提供する事が出来たはずだが。
(岡本太陽)