アイアンマン2 - 前田有一

◆コメディ映画としていける(65点)

 『アイアンマン2』は最新のVFXをたっぷり使った魅力的なアクション大作だが、コメディ映画としても一流である。もっとも、それを作り手が意図した形跡はない。

 アイアンマンの正体を自ら世界に明かしたトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)。開き直った彼は世界の紛争地域で大活躍するが、その圧倒的な戦闘力を当の米軍はもっとも警戒していた。やがてアイアンマンスーツのテクノロジーを政府に提出せよと言われてしまうトニーだが、もちろんまるでその気はない。だがそんな傲慢な彼を、アイアンマンに勝るとも劣らぬ強力なスーツを制作しながら恨みの目で睨む男(ミッキー・ローク)がいた。

 タリバンをバカにしまくった前作も笑えたが、このパート2も面白い。

 最強兵器を洞穴で発明してしまったトニー・スタークに対する、ライバル会社の嫉妬と確執のようなものがひとつの軸となるが、両者ともどこのイベント企画会社かと見まがう派手さで、到底軍事企業とは思えない。

 間に入る米軍(ステルス爆撃機開発などで知られる、前作でもおなじみのエドワーズ空軍基地でのロケが見所)も駄々っ子のように超合金のできそこないをほしがる能天気さ。悪名高い軍産複合体も、ハリウッド映画にかかれば、のんきなおじさんたちの平和な集まりである。

 開発困難な新元素などとあおっていた物を、何の苦労もなくあっという間に実現してしまうなど、もはや確信的としか思えぬシーンも笑える。

 一方、売り物のアクションシーンはさすがによく出来ている。最大の悪役はミッキー・ローク演じる兵器開発者、ウィップラッシュだが、この男ときたらなかなか責任感のある好人物で、自分でつくった試作品は自分で試す立派な社会人精神を持っている。

 なぜか上半身裸で、アイアンマンスーツのチープなパチモンを身に着けるその様子は、しかしなかなか格好いい。スタークに対する恨みの背景には、美しき父子愛が動機としてあり、観客が感情移入するのはむしろこちらだろう。

 だいたい、負けても負けても最後に必ず立ち上がるというキャラクターはヒーローの役回り。じつは『アイアンマン2』は、ヒーローものの雛形を、悪役とヒーローの立場を正反対に適用した不思議な映画なのである。これではミッキー・ローク頑張れと応援したくなるのも当然である。

 アクションではもう一人、スカーレット・ヨハンソンが黒レザースーツ姿で暴れまわる。大男たちを相手にウラカン・ラナを連発するその戦闘スタイルは、男ならだれもが挟まれて投げられたいと感じるセクシーなもの。

 ただ問題は、彼女最大の武装である胸の肉量が大幅ダウンしている点。体の線丸出しのタイトな革衣装を着て激しいアクションをするということで、自然派な彼女もさすがにダイエットしたのだろう。だがそれは、結果として完全に裏目に出た。

 たとえ運動神経悪そうな体型などといわれても、ヨハンソン氏は世界一魅力的なぽっちゃり系という、自らの魅力を自覚する必要がある。やせて文句を言われる女優というのも聞いたことがないが、ここは大事な事なので強調しておく。

 本作でウィップラッシュが与えた一撃は、今後どうアイアンマンの立場を蝕んでゆくのか。そこは本作では描かれなかったが、完結編とされる次回に期待したい。

前田有一

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