◆悩めるヒーローが多い昨今のアメ・コミ映画の中、この“のんきさ”は捨てがたい(65点)
大ヒットしたアメコミ・ヒーロー映画の続編は、相変わらずド派手な作りで、娯楽映画の王道を行く。“アイアンマン”であることをメディアに公表したものの、勝手なヒーロー行為が問題視されてしまった天才科学者兼兵器産業のCEOトニー・スターク。アイアンマンの正当性を主張して、国家が求めるパワード・スーツ没収令を断固拒否した彼の前に、アイアンマンと互角の力を持つ敵ウィップラッシュが現われた。彼の武器は金属を一撃で真っ二つにするほどのパワーを持つ“エレクトリック・デス・ウィップ”。一方、トニーはパワードスーツのエネルギー源である、胸に埋め込んだリアクター(特殊電池)の悪影響により苦しみ始めていた…。
主人公を逆恨みする強大な敵、身体に埋め込んだ特殊電池の毒素、謎の美女の図りかねる真意。こう来ると物語はシリアスに見えるが、この映画に関しては深刻な要素は皆無だ。何しろ中年ヒーローのトニー・スタークは生まれながらの億万長者で天才発明家、プレイボーイで遊び人な上に、お気楽な平和主義者なのだ。冒頭のアイアンマン・ショーの演出のように、ネガティヴな要素がまったくないというのがこのヒーローの個性だ。父親の愛情不足を一瞬チラつかせるので同情しかけたが、実は愛されてました~! となるからつくづく恵まれている。
彼の前に立ちはだかるロシア人の強敵ウィップラッシュは、自身と父の不遇の原因がスタークにあると逆恨みする天才科学者だ。異様な風貌のミッキー・ロークが怪演しているが、どう見ても頭が良さそうに見えないから苦笑してしまう。また本作のウリである新キャラで、スカーレット・ヨハンソンとサミュエル・L・ジャクソンが登場するが、思わせぶりな割には終わってみればさしたる必要性を感じない役。おまけに、スカヨハがセクシーすぎて、グゥネス・パルトロウを引き立て役にしてしまう始末だ。そんなキャスティングのデコボコ感をすべて払拭するのはロバート・ダウニー・Jr.のノーテンキな笑顔だ。悩めるヒーローが多い昨今のアメ・コミ映画の中、この“のんきさ”は捨てがたい。アクションシーンは前作よりさらにパワーアップして単純明快な話を大仰に盛り上げる。これぞ陽気なハリウッド製エンタメ映画の醍醐味といえよう。
(渡まち子)