◆電気鞭をしならせてレースカーをぶった斬るミッキー・ロークと、しなやかな身のこなしで屈強な男たちをぶちのめすスカーレット・ヨハンソン。魅力的な敵役と謎の美女という新たな登場人物を得て、主人公は追い詰められていく。(60点)
半裸の上半身にエネルギー発生装置を身につけた上に高圧電流が流れる鞭をしならせて、復讐を誓った男を演じるミッキー・ロークがいかにもロシアの荒くれ者の雰囲気を醸し出す。一方、黒いボディスーツに身を包み、打撃から関節技まで蛇のようなしなやかな身のこなしで屈強な男たちをぶちのめしていくスカーレット・ヨハンソンは、さながら高度に洗練された戦闘マシン。数多のスーパーヒーローものの続編の定石通り、魅力的な悪役と謎の美女という新たなキャラクターを得て、主人公は追い詰められていく。
トニーは「自分がアイアンマン」と正体を告白したため、米軍からパワードスーツの提供を求められる。その頃モスクワでは、トニーに恨みを持つイワンが自家製のパワードスーツを完成させ、モナコでカーレースに出場しているトニーの前に現れる。
トニーは「世界平和を民営化した」と言い放つほどの自信家で、アイアンマンの圧倒的な戦闘能力が北朝鮮・イランなどの反米国家を平伏させたと自負している。そんな彼の前に薄汚れたイワンが電気鞭を手に登場、その切れ味は一閃するだけでレースカーをぶった斬り、切断面の鮮やかさが切れ味の鋭さを見せる。電気鞭以外に武器のないイワンは意外に弱いのだが、アイアンマンに傷を負わせて彼にも弱点があると大衆にアピールすることに成功する。暴走すれば自由世界の危機に陥りかねないアイアンマンの独善を、敵役が鼻をへし折る形で抑制する展開が新鮮だ。
やがてトニーのライバル会社に移ったイワンは戦闘ロボットの量産化に成功し、自らもリニューアルしたパワードスーツに身を包み、再びアイアンマンに挑む。スピードあふれる空中戦から重量感たっぷりの地上戦までその迫力は3D映画に匹敵するほどだ。しかし、クライマックスともいえる金属同士の戦闘シーンよりも、トニーの秘書が敵のアジトに乗りこみ、1人で十数人の警備員に対し腕や脚を相手の急所に絡めて締めあげるマーシャルアーツ系の技術を駆使して闘う場面のほうが、暴力的な衝動が抑えられた優雅な美しさに満ちている分印象に残る。むしろこの映画の一番の見どころと言えるだろう。。。
(福本次郎)