◆アメコミ系SFヒーローアクション映画とは一味違った面白さ(90点)
マーベル社の人気アメコミ作品が待望のスクリーンデビューを果たした。
実業家兼天才的発明家のトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)は、米政府とのパイプ役である大企業スターク・インダストリーズのCEO。彼は新兵器の実験をするべくアフガニスタンに訪れていたが、そこで武装テロ集団に襲撃され拉致されてしまうが、同じく拉致されていたインセン医師(ショーン・トーブ)の手によって命を救われる。テロ集団に兵器製造を命じられた二人は、その目を盗んで最強のパワードスーツを完成させ、これを装着したトニーはテロ集団を蹴散らして脱出に成功する。その後、自社が製造した兵器がテロ組織に使用されている事実を知ったトニーはショックを受け、テロに苦しむ人々を助けたいという一心で新たなるパワードスーツを製造し、テロ集団に挑むのだが……。
監督はジョン・ファヴロー。彼は役者としても知られているが、ファンタジックなコメディー作品を得意とし様々なヒット作を生み出してきた。本作でも彼ならではのコミカルな描写が観られ、これが面白くさせるためのスパイスとしてしっかりと活かされている。
見所といえば、この手の作品ならではの迫力満点のド派手なシーンだ。このアイアンマンは三度に渡って変化するが、変化するごとにパワーアップし、同時に見せ場となるアクションシーンもレベルアップして面白さが増してくるのである。日本の特撮ヒーロー番組のような感じではあるが、特撮ヒーロー番組やその他のアメコミ作品では変身能力のある者がヒーローに変身するが、このアイアンマンはごく普通の人間が才能を活かしてパワードスーツを製造し、完成したスーツを装着したときにやっとヒーローになれるというものだ。この手作りヒーローという点が新趣向であり、興味深い。そんなアイアンマンの活躍ぶりはCGを駆使してダイナミックに描き、凄まじいシーンを連打させる。ついつい目を大きく見開いて観てしまうほどアクションシーンは強烈だ。心の底から面白さを実感でき、しっかりと楽しむことができるのが良い。
面白いのはアクションやパワードスーツの製造過程だけではない。トニーが今まで自分がやってきたことは本当に正しいことではないと思って兵器製造を中止させ、テロに苦しむ人々のためにできることをやっていくと誓うが、この心変わりが観ていて気持ちが良く、やっと本当のヒーローになれたのだという実感が湧いてくる。アイアンマンとなってテロリストの極悪行為に苦しめられている父子を救出するシーンは、正義のヒーローらしい定石的な描き方ではあるものの最高に良い印象を与えてくれる。また、トニーはセレブ的な存在であり、彼のリッチな生活ぶりや華やかなパーティーに出席したりというセレブらしさがしっかりと描かれており、これによって高級感を漂わせた格調の高い作品に仕上がっていることがわかる。
脇を固めるのはグイネス・パルトロウ、テレンス・ハワード、ジェフ・ブリッジスといった豪華な芸達者が顔を揃えており、彼らのキャラクター描写もしっかりとなされている。だから、アイアンマンの活躍だけでなく彼らの活躍ぶりも印象的なので注目すべきだと言い切れる。
本作こそ今までのアメコミ系SFヒーローアクション映画とは一味違った面白さを存分に味わえる作品だ。上映時間は二時間を少し越えるが、最初から最後まで様々な魅力や面白さがふんだんに取り入れられているため、退屈さや長さを感じることなく思いっきり楽しむことができる。
ちなみにロバート・ダウニー・Jr.扮するトニーは、先に公開された同じくマーベル社のアメコミ系SFヒーローアクション作品『インクレディブル・ハルク』(08)のラストシーンにも登場している。
本作の続編製作が既に決定しているようであるが、期待を良い意味で裏切れるような最高に面白い作品になることを望んでいる。
(佐々木貴之)