いいかも弘前!りん子農家のアップルは美味しい。(点数 55点)
りんごのうかの少女
『ウルトラミラクルラブストーリー』の横浜監督が出身地青森県の弘前を舞台に全編津軽弁でもって、ジム・ジャームッシュ監督作品『ミステリー・トレイン』以来の工藤夕貴と永瀬正敏の共演を果したプチ豪華な佳作。
ストーリーテラーとして、サンシン奏でる外国人青年が登場。
弘前市のりんご農園を営む三上一家の14歳のりん子は、仲の悪い母と祖母、仕事もせずにアルコール依存の父に嫌気がさし、学校にも行かず家出を繰り返します。反発する若者の行動は都会も地方も大差ありません。
ある日、家出の資金が底をつき、久々 家に戻るりん子が見た物は、父の遺影と父からの誕生日プレゼントの馬でした。
この逸話が異様なまでに可笑しく、次第にりん子と林檎農園の距離が縮まるドラマ構成がうまい。
上映時間42分という中編映画にして起承転結の技ありは横浜聡子監督の才気です。
横浜監督は1978年に青森に生まれ、東京で1年ほどOLをし、2002年に映画美学校第6期フィクションコース初等科に入学。2004年、同高等科卒で卒業制作の短編がCO2オープンコンペティション最優秀賞を受賞後、長編第1作『ジャーマン+雨』を自主制作し、なんと異例の全国劇場公開を果します。彼女の才気=エンターテインメントだと立証し、次の『ウルトラミラクルラブストーリー』は商業映画で成功し、トロントやバンクーバーなどの国際映画祭で上映されました。
彼女の映画出演者にはフェイマスなキーマンを起用するしたたかさが嬉しく、『ジャーマン+雨』の ひさうちみちお、『ウルトラミラクルラブストーリー』の松山ケンイチ……。そして本年公開の傑作『舟を編む』のメイキング監督という裏方仕事も抜群の腕前でした。
映画ファンならば、横浜監督と 弘前市 の抜群のコラボレーションを堪能することでしょう。
ちなみにジャッジ点数は、もっと長くこのドラマを観たかったという筆者の私的な意見でございます。
■2013年 日本映画/監督・脚本:横浜聡子/企画・製作: 弘前市 /出演:とき、永瀬正敏、工藤夕貴、永澤一哉、黒滝颯一郎、佐々木(アルプスおとめ)、秋本博子、ギャレス・バーンズ
オフィシャルサイト:http://littlemore.co.jp/ringo/
(中野 豊)