よなよなペンギン - 山口拓朗

◆心に残るものがあまりに微量(40点)

 「銀河鉄道999」や「鉄腕アトム」などの名作を手がけてきた日本アニメ界の巨匠"りんたろう"が、「DETH NOTE」「時をかける少女」「サマーウォーズ」などを制作してきたマッドハウスとタッグを組み、「よなよなペンギン」を制作。ペンギンコートを着る少女ココが、勇気と愛をもって仲間たちを救う冒険ファンタジーだ。

 ペンギンコートを着て夜な夜な町を歩くココは、ある日、道でペンギンのカプセルを拾う。自宅でそのカプセルを開けると、なかから動く人形が出てきた。その人形に誘われるままに「ペンギンストア」に行くと、こんどはチャリーというゴブリン村に住む男の子と出会う。ココはチャリーと一緒にゴブリン村へと旅立つが……。

 子供向け(低学年くらいまで?)という前提を差し引いても、物足りなさを感じる作品だ。おもちゃ箱をひっくり返したようなキラキラした世界からダークサイドな闇の世界まで、ココが高低差のある時空を行き来する展開はおもしろいし、「七福神」や「ラピスの泉」のような神話的なアイテムが出てくるくだりも興味深い。だが、見終わった瞬間も、そのあとも、心に残るものがあまりに微量だ。

 その最大の理由は、主人公のココが寄せるペンギンのコートへの「思い」に、子供だまし、否、子供もだませない程度の動機付けしかなく、ドラマの推進力をココ生来の「純粋さ」と「慈悲深さ」に頼りすぎているからだろう。そのうえ、ココが初めて訪れたゴブリンの町でいきなり大歓迎されてしまうなど、主人公が乗り越えるべき壁が少ない点も、この映画に対する評価を下げるポイントだ。

 一見個性的なキャラクターも多数登場するが、ふたを開けてみれば、彼らの魅力も表層的にしか描かれていない。なかでも、ココと対峙するキーパーソン、闇の帝王ブッカ・ブーのキャラクターが掘り下げられていないのは致命傷だろう。ココが生まれもって「善」なのに対して、ブッカ・ブーは判で押したような「悪」である。そこには「意外な背景」さえない勧善懲悪な世界があるだけだ。

 そういう意味では「ただの意地悪野郎かと思ったブッカ・ブーのNo.1家来ザミーがじつは○○だった」というサブストーリーが、個人的には一番おもしろく感じられた。ザミーにはココ以上の成長が見られる。しかも、ザミーの声を担当した太田光(爆笑問題)の声が見事なほどハマっているのだ。

 "りんたろう"とマッドハウス、さらにはフランスやタイのクリエーターらも加わって生み出された、日本的な2DアニメとCGを融合した絵作りは、絵本のようなあたたかみがあり、違和感なく見られる。がしかし、フルCG化によって日本の伝統的な2Dアニメの強み(例えば「表現力」)を昇華できたのかといえば、疑問が残るところである。巨匠"りんたろう"をあえて監督に起用したという点での成果が乏しかったのも残念だ。

山口拓朗

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