やさしい嘘と贈り物 - 山口拓朗

やさしい嘘と贈り物

© 2009 Overture Street Films, LLC

◆いくつになろうとも、人は思春期のころのようなまっさらな気持ちで恋をすることができる(70点)

 「やさしい嘘と贈り物」を見てまっさきに思い出したのはクリスマスだ。クリスマスの根源的な意味はさておき、サンタクロースがやって来るその日は、世界中が「やさしい嘘と贈り物」で満たされる。大人たちはしばしば「嘘はいけません!」と子供に説教するが、正しくは「やさしくない嘘はいけません!」であるべきなのかもしれない。 

 「エド・ウッド」(1994年)でアカデミー賞助演男優賞を受賞したマーティン・ランドーと、「アリスの恋」(1974年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞した・エレン・バースティンが競演する本作「やさしい嘘と贈り物」は、人々の「やさしい嘘」が魔法のような奇跡を起こす物語だ。ニック・ファクラー監督は弱冠24歳の新鋭。24歳らしいみずみずしさと24歳とは思えないほど深い人間観察眼を併せ持った演出で、切なくも心温まる人間ドラマを紡いだ。

 ロバート(マーティン・ランドー)は、平凡な日々をすごす一人暮らしの老紳士。身寄りもないのか、クリスマスには自分自身へのクリスマスプレゼントを用意していた。そんなある日、ロバートは近所に住むメアリー(エレン・バースティン)から食事の誘いを受ける。久しぶりのデートを前に少年のように心を弾ませるロバート。クリスマスには一緒にパーティに出かけるなど、ふたりは急接近していくが……。

 いくつになろうとも、人は思春期のころのようなまっさらな気持ちで恋をすることができる――。そんな希望を与えてくれる映画だ。希望に満ちた恋愛の初期衝動というのは美しいものだ。沈んだ気持ちや、くすんだ景色を一変させる人生の特効薬。なりゆきを見守る観客は、当初ロバートが自分自身に用意していたクリスマスプレゼントの中身を知ったときに、その特効薬がいかにロバートにとって大きなものであったかに気づかされる。

 単なる老人の恋愛ドラマとしても十分に成立しているが、この作品では、登場人物たちがつく「やさしい嘘」にサスペンス的な役割を担わせることで、人間の絆をより掘り下げて描くことに成功している。もちろん、この世にマイナス要素を完全に取り除いた嘘など存在しないのかもしれないが、少なくともこの映画の「嘘」に悪意は見あたらない。そう「クリスマスのサンタクロース」と同じように。

 名優マーティン・ランドーとエレン・バースティンは、よもや今さら純愛ドラマの主人公を演じることになろうとは思っていなかったであろう。しかも24歳の監督の演出を受けるというオマケ付きで。老練な役者と若き監督が価値観や人生観を共有しながらひとつの作品を作り上げたという意味でも、本作「やさしい嘘と贈り物」の価値は小さくない。やがて明らかになる真実に対してツッコミを入れるのは無粋というもの。大どんでん返しがもたらす感動を素直に味わいたい。

山口拓朗

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