やがて来たる者へ - 福本次郎

映画は、彼女に眼の前で起きている事実を淡々と受け止めさせ、その感情を交えない描写は虐殺の歴史ですら客観視しているようだ。(点数 60点)


(c)ARANCIAFILM2009

無知ゆえに貧しく、無教養ゆえに世界の趨勢から距離を置いている。
第二次大戦中のイタリア山間部の農村、そこには戦争の影は薄い半面、
相変わらず余裕のない生活に人々は喘いでいる。カメラはそんな村が、
否応なしに殺し合いに巻き込まれ、多くの非戦闘員が血にまみれてい
く様子をとらえる。

【ネタバレ注意】

小さな村で暮らすマルティーナは、弟の突然死以来口がきけなくなり
学校でいじめられたりするが、大家族のもと可愛がられている。1943
年冬、村にもドイツ軍が進駐し、若者たちはパルチザンを組織する。

連合軍に降伏してドイツの“敵”になったイタリアの複雑な状況が背
景にあるのだが、説明は一切ない。それは、この村の住民たちにとっ
てイデオロギーや国家間の対立など政治家や官僚の戯言に過ぎず、た
だ“生き残ることこそ勝利”という農民のポリシーの上に彼らの日常
が成り立っているから。そうやって大人も女も態度を鮮明にせず、村
に来た軍人の銃口をかわし続けてきたのだ。

だが、その光景をじっと見つめているのは8歳の少女。彼女にはまだ敵
味方や善悪の区別がつかず、村人が殺されてもドイツ兵が死んでも、
意味も理由も理解できない。それでも、“死”が忌むべきものなのは
知っている。映画は、彼女に眼の前で起きている事実を淡々と受け止
めさせ、その感情を交えない描写は虐殺の歴史ですら客観視している
ようだ。

福本次郎

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