ぼくの大切なともだち - 福本次郎

オープンに付き合える友人を作るのは、恋人を作るより難しい。なんでもカネですまそうとする男が自分に親友がいないと気付き、改めて損得勘定ナシの友を探す過程で、人間関係には大変な努力と心遣いが必要であることを描く。(60点)

© 2006.FIDELITE FILMS―WILD BUNCH―TF1 FILMS PRODUCTIONS―LUCKY RED./WISEPOLICY

 オープンに付き合える友人を作るのは、ある意味で恋人を作るより難しい。「同じ釜のメシを食った」という仲間意識が構築されにくい世の中では、命がけで誰かのために行動するという事態はほとんどなく、固い絆で結ばれた友など幻想に過ぎない。なんでもカネですまそうとする男が自分に親友がいないと気付き、改めて損得勘定ナシの友を探すプロセスで、人間関係を築くためには大変な努力と心遣いが必要であるということを描く。

 古美術商のフランソワは仕事の関係者から「お前には友達がいない」といわれ憤慨、10日以内に親友を皆に紹介するという賭けをする。早速、知人を当たるが誰にも相手にされず、途方にくれた挙句偶然知り合った社交的なタクシー運転手・ブリュノに人から好かれるコツを学ぶ。

 本当に困っているときに手を差し伸べてくれるのが友人と定義しながら、友人がいなくて本当に困っているという皮肉。ブリュノから第一印象を向上させるテクニックを教わっても、それ以上深いつきあいにならない。相手の心にどこまで踏み込んで、どのあたりで踏みとどまるか。その距離感の取り方は人によって微妙に変わることを学んでいく過程が切なく身にしみる。それは個人主義が行き過ぎた挙句共同体が崩壊してしまった現代社会における、コミュニケーションの第一歩。やがてフランソワはブリュノこそ親友と思えるまでになるが、友情の真の意味を理解せずブリュノを傷つける。

 ブリュノもまた親友と妻に裏切られ、心に傷を負っている。友人に恵まれているようでも親友はおらず、寂しい思いはフランソワと同じ。フランソワに利用されたと知ったブリュノはさらに人間不信に陥る。それがきっかけで、やっとフランソワの自己犠牲がブリュノを救う機会を与える。人生におけるたいていのトラブルは金銭で解決できるからこそ、心の結びつきを大切にしなければならない。それでも「刎頚の友」といった暑苦しさを感じる仲にはなりたくない。同性愛ではなく、気の置けない友人でいるのにこれほどまでに神経を使わなければならないという、ネット時代の病巣を見るようだった。

福本次郎

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