ぼくのエリ 200歳の少女 - 渡まち子

◆映像は静謐で冷やかだが、12歳の初恋はぬくもりに満ちている(75点)

 北欧特有の冷気と幻想の中で繰り広げられる残酷で美しいメルヘン。孤独な少年とヴァンパイアの少女の結びつきを、ポエティックに描いていく。12歳のオスカーはストックホルム郊外の街で暮らす繊細で孤独な少年。学校で深刻ないじめにあっているが、親も教師も彼の状況に気付かない。ある日、アパートの隣に引っ越してきたエリという少女に出会う。一方、街では、残虐な殺人事件が連発していた。夜しか会えないエリに、オスカーは心惹かれていくが、ある時、エリが人の血を吸って生きるヴァンパイアだと気付いてしまう…。

 オスカーとエリは共に深い孤独を抱えていて、本能で結びついたのだろう。おそるおそる近付き、そっと言葉を交わし、ついにエリの正体を知ってもなお、オスカーがエリを求めてやまないのは、彼女の中に他者と関係性を持てない自分を見るからだ。それは恋と呼ぶにはあまりに幼い感情なのだが、エリから「自分が女の子じゃなくても好き?」と聞かれればしっかりと頷く。2人の結びつきは、互いを受け入れることから始まるという根源的な関係だ。ヴァンパイアであるエリがオスカーの家に入るには、まず相手から招かれなければならない。「入っていい」のひと言がなく、入口で身体中から血を流すエリの姿は、途方もなく長い間生きてきた究極の孤独をにじませていて、胸をえぐられるようだ。降りしきる粉雪、凍った河、青い水をたたえたプール。映像は静謐で冷やかだが、12歳の初恋はぬくもりに満ちている。ファースト・キスが血の味でも、血が不十分な時のエリの顔が土色でも、構わない。オスカーとエリの心の会話は、モールス信号が記憶しているのだ。二人は生きることを強く決意する。ラストに、不思議なほど突き抜けた幸福感が訪れるのはそのためだ。対照的なルックスの子役たちといい、シャープな映像といい、トーマス・アルフレッドソン監督の鋭い感性が結実した、リリカルな秀作だ。

渡まち子

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