◆ついに実現した二人の“共演”は、グランドフィナーレにはあまりにも地味すぎやしないか(30点)
のだめと千秋の恋の結末が気になるグランドフィナーレの後編だが、見終わってみると、わざわざ2部構成にする意味があったのだろうか?? と大いに疑問だ。音楽に集中するため、互いに距離を置こうと離れ離れに暮らすことになったのだめと千秋。孫Ruiと共演し大成功を収める千秋とは対照的に、のだめはコンクールへの参加さえ許してもらえず焦る日々だ。千秋との恋愛にも限界を感じ、失意ののだめに、シュトレーゼマンが共演話を持ちかける…。
相変わらずのメンバーと相変わらずの展開で、安心感満載…と言えば聞こえはいいが、物語に新鮮味はまったくない。ヨーロッパロケの驚きは前編ですでにを経験済み。不思議な電子楽器テルミンを操る新キャラの活躍もごくささやかものだ。この後編のウリはいったい何なのか? と首をかしげたくなる。千秋に追いつこうと必死ののだめが、天才ぶりを発揮し、今度は千秋が焦る。やがて二人は、音楽と互いへの強い愛を認識する。最終楽章だというのに、お話は今までも何度も目にしたこのパターンの繰り返しではないか。のだめはプラハで遂に世界デビューを飾ったというのに、物語はみるみるスケールダウン。しかも本作にはコミカルな要素はほとんどなく、シリアス一点張りだ。本気モードは、本物の音楽があれば十分なのに。ついに実現した二人の“共演”は、グランドフィナーレにはあまりにも地味すぎやしないか。このために前・後編という長い時間を費やしてきたのかと思うと力が抜けた。ラストにガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」が流れるが、映画は、狂詩曲というより未完成交響曲。いつものように、クラシックの名曲をオーケストラとピアノ、さらに千秋の解説付きでたっぷりと堪能できるのは嬉しいが、ファンにとっては見届けた気持ちはあっても達成感のないフィナーレだろう。
(渡まち子)