のだめカンタービレ 最終楽章 前編 - 福本次郎

◆安っぽいシチュエーションと大げさなリアクションは、世間の常識など一顧だにせず自分の目指すアートに邁進する音楽家たちの青春をデフォルメする。前半は笑えないコメディだが、真摯に楽曲に向きあう後半は聞き入ってしまう。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 安っぽいシチュエーションと大げさなリアクションは、世間の常識など一顧だにせず自分の目指すアートに邁進する音楽家たちの青春をデフォルメする。恐ろしく幼稚なメンタリティしか持たないのにピアノの腕前は大きな可能性を秘めた女と、己が振るタクトが紡ぎだすハーモニーこそ完璧と信じる男の、プロとして通用するかが試されていく過程が騒々しいエピソードの連続で綴られる。人気テレビドラマの延長線上にある前半部分は笑えないコメディだが、真摯に楽曲に向きあおうとする後半は思わず聞き入ってしまった。

 老舗オーケストラの常任指揮者になった千秋だが、オケの奏者はやる気のない下手くそばかり。観客から大ブーイングを受けた千秋はオーディションで新たにメンバーを募る。そんな千秋に、のだめは徐々に距離を感じていく。

 登場人物がみな「変態の森」の住人である以上、物語やキャラクターにリアリティはまったくなく、先人の残した偉大な音楽を再現するときにだけこの作品は真実を模索する。あまりにも下手くそな「ボレロ」に始まり、のだめのモーツァルト、そしてクライマックスの壮大なチャイコフスキーまで、きちんとした音楽を聞かせた上に千秋の真面目な解説を入れる手法は、この映画の主な客層であるクラシック音楽など絶対に聞かない若者層の理解を助けるのに大いに役立っているはずだ。

 千秋の努力の結果、彼が指揮をするコンサートは大成功を収める。その会場に駆け付けたのだめの目の前で千秋はピアノの腕前も披露し、のだめは千秋との間に圧倒的な差ができてしまったことを知ってしまう。それは千秋がもうのだめを必要としていないという意味でもあり、このまま千秋といてはのだめの方もダメになってしまうという危機感でもある。同じアパートに暮らしていたふたりが一言も交わすことなく引っ越してしまうあたり、お互いの繊細でリアルな感情が描かれていた。

福本次郎

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