眉根にしわを寄せ、口は真一文字。不機嫌を絵に描いたような表情でキッと見つめる少女の視線がとてもキュートだ。ぬくぬくと育ってきたヒロインが少しずつ自分の考えを主張することを覚えるうちに、自由とは何かを考えるようになる。(70点)
眉根にしわを寄せ、口は真一文字。不機嫌を絵に描いたような表情でキッと見つめる少女の視線がとてもキュートだ。社会運動に熱心な両親のせいで楽しかった毎日が一変し、とても不安で不満なのにその気持ちにぜんぜん気付いてくれない。思い切って気持ちをぶちまけても言いくるめられてしまう。両親の懐でぬくぬくと育ってきたヒロインが少しずつ自分の考えを主張することを覚えるうちに、自由とは何かを幼いながらに考えるようになる。
’70年、ミッション系の小学校に通う9歳のアンナは恵まれた生活を送っている。ある日、両親が共産主義思想に目覚め、アジェンデ政権を支持するためにチリに旅立つ。帰国後、完全なアカになった両親は狭いアパートに引っ越す。
アンナの両親は有産階級の出身で、両親も高度な教育を受けたインテリとして裕福な消費生活を楽しんでいる。それが一転して電気代を節約して回る窮乏生活、食事の質も落ち、彼女の苛立ちは爆発する。自分たちのやりたいことをして生き生きしている両親に対して、自分だけが我慢を強いられているような不公平感。それはそのまま労働者と資本家の関係だ。アンナは、父が助けようとしているのは大人なのに自分の思い通りに生きられず貧しい生活を強いられている人々であると、少しずつ気付き始める。
アンナのその思いは、父が抑圧者の家系出身であることを知って決定的になる。父自身がそんな自分を恥じ変わろうとしていたこと。学校の先生もまた抑圧者であること。父がアジェンデの死に深く絶望していること。不満を胸に溜め込んでいるだけでは何も変わらない。自分から行動することで、世界は変えられないかもしれないけれど、少なくとも自分は変えられるということをアンナは学ぶ。ラスト、公立学校に転校したアンナが勇気を出して新しい一歩を踏み出すシーンは、世界はつらく厳しいが、それ以上に広く希望に満ちていることを教えてくれる。
(福本次郎)