ずっとあなたを愛してる - 福本次郎

◆彼女は心を閉ざし、笑顔は見せない。まるで自らを罰するかのように、他人のやさしさから距離を取る。罪の意識と死の影にさいなまれるヒロインを、クリスティン・スコット・トーマスが抑制の中にも鋭い悲しみを利かせて演じる。(70点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 その女は心を閉ざし、笑顔は見せない。まるで自らを罰するかのように、他人のやさしさから距離を取り、言葉も控えめだ。そんなヒロインが、妹と新しい友人に恵まれて人生を見つめなおす過程がミステリー仕立てで描かれる。いったい何が起きていたのか、なぜ長期間にわたる不在があったのか、映画はそれらの疑問の答えを小出しにしながら、衝撃の真実に迫っていく。罪の意識と死の影にさいなまれながらも生き続ける道を選ぶ彼女を、クリスティン・スコット・トーマスが抑制の中にも鋭い悲しみを利かせて演じ、物語に深い奥行きをもたらしている。

 15年ぶり刑務所から出所したジュリエットは妹・レアの家の世話になる。再就職しようとするが世間の目は厳しく、一方でレアの夫もいい顔をしない。それでもレアの養女と仲良くなり、レアの同僚・ミシェルとも接近していく。

 ストーリーが進むうちにジュリエットの過去が明らかになるが、核心は語られない。しかし、彼女が医師、しかも試験管で実験をしていたという会話から、高度医療の従事者だったとうかがえる。インテリに属する彼女が何故息子を手にかけたのか、その理由は予想通りだ。そんな、15年前から時間が止まってしまったジュリエットに、愛を伝え続け、再び彼女の時計を前に進めようとするレアの献身的な姿が美しい。この姉妹がボケた母親を見舞うエピソードがあるが、頻繁に訪れているレアを母親は認識できないのに、勘当したはずのジュリエットは覚えている。母親にとってジュリエットは自慢の娘だったのだろう。ところが、ジュリエットが事件を起こしてからは「なかったもの」にしていたのに、認知症になると思い出すという皮肉。生きていようといまいと、子供を亡くしてしまうのが親にとって一番つらい経験であることを象徴する見事なシーンだった。

 やがてジュリエットの気持ちにも徐々に変化が現れる。ミシェルをはじめ人はみな何らかの傷を抱えていると知り、人の心情を思いやる余裕ができたからだ。そして胸の中の重荷を誰かと共有すれば少しは楽になれることも発見する。彼女がミシェルの呼びかけに元気に応えるという未来への希望に満ちたラストに、救われた思いだった。

福本次郎

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